平成28年度は前年度にひき続き、京都市動物園のニシゴリラ3個体(5歳オス、16歳オス、30歳メス)を主たる対象とし、チンパンジー5個体(4歳オス、大人オス2個体、大人メス2個体)、シロテテナガザル1個体(33歳オス)、マンドリル1個体(11歳)を比較研究のための対象種として、アラビア数系列の学習実験をおこなった。5歳のニシゴリラと28歳のチンパンジーは1から13までの数系列を習得した。その他、23歳のチンパンジーが9まで、シロテテナガザルが8まで、推定39歳のチンパンジーが7まで、マンドリルが6までの系列を習得した。他のチンパンジーやゴリラでは2または3までの系列の習得にとどまっている。 学習の進んだ5歳のニシゴリラ幼児とチンパンジーの大人オス2個体、およびシロテテナガザル1個体については、1から9までのアラビア数字を使って、非連続な3から6項目の系列を作り、数系列の学習をテストした。その結果、非連続系列であってもほとんど成績が低下することなく、各数字の順序関係を理解していることが示された。 ゴリラ幼児とチンパンジー2個体については、第1項目に触れた直後に第2項目以降がマスクされる作業記憶課題を課したところ、チンパンジーでは3項目の系列では75%程度の正答率を示したが、4項目で20-30%の正答率にとどまり、第1項目への反応時に次の項目の位置しか記憶していないことが示唆された。一方、ニシゴリラ幼児では5項目の系列まで90%以上の正答率を示した。6項目の系列では正答率が約50%に低下したことから、ゴリラ幼児は第1項目から第4項目の位置までを第1項目反応時に記憶していたことが示唆された。6項目での成績は訓練を継続しても50%から上昇しなかった。これらの成果は、米シカゴ市で行われた国際霊長類学会で発表された他、国内学会やその他メディア、動物園内掲示物において市民に伝えられた。
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