研究課題/領域番号 |
26330178
|
研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
菊池 眞之 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 講師 (20291437)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 脳 / 視覚系 / 3次元物体 / 凹凸 / 知覚 / 心理物理 |
研究実績の概要 |
平成26年度は凹凸を有する3次元物体の認知に関し,(1)パターン形状認知,(2)物体周辺での空間認知,の2つの観点より取り組んだ.また,当初の計画には含まれていなかった図地知覚のモデル研究についても進展があった. まず,(1)のパターン形状認知に関しては,2次元輪郭の形状認知が輪郭の帰属領域サイドの変化により異なったものになるというBaylis&Driverの心理物理的知見が3次元オブジェクトの境界である曲面へも拡張され得るか否かを調べるべく,RDS(ランダムドットステレオグラム)を用いた3次元凹凸物体表面を視覚刺激とするパターンマッチング課題をデザインした.曲面の凹凸は前額平行面上の円盤状表面のランダムな位置に中心軸が視線に平行な正規分布関数を加減算することで作り出す.当該実験の枠組みは整い,被験者を募っての実験も行っているが,年度をまたいでのパラメータチューニングが必要な状況となっている. 次に,(2)の物体周辺での空間認知の研究に関しては,2次元輪郭周辺にて主観的な空間の歪みが生じることを示唆する代表者による先行研究の知見が3次元物体にも適用されるか否かを調べる心理物理実験をデザインした.RDSにより表現される物体刺激周辺にドット状プローブ刺激を配置し,それが主観的にどう変位して知覚されるか調べられるようにした.この実験についても大枠は構築できたものの,RDS刺激形状やプローブ位置等に関してのチューニングを行う段階で年度を終えている.引き続き継続する予定となっている. 一方,3次元物体認知の基盤となる2次元刺激からの図地分離知覚に関し,代表者が以前提案した神経回路モデルを発展させてより実際のヒト知覚を説明できるようにした.具体的には,任意の閉曲線の内部を図として特定する以前のモデルを改良し,閉曲線の幾何的特徴次第では内部を穴として知覚するヒトの知覚を説明できるようにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度に完遂させることを計画していた3次元パターン形状認知,3次元物体表面付近の空間歪みにまつわる2種類の心理物理実験とも,実験のデザインの策定を行い,コンピュータを使った実験を実施すべくプログラム作成も既に行っているものの,刺激を記述するパラメータ空間が高次元であることもあり,調べるべき現象を最も顕著に観測することができるパラメータ領域の探索が不完全な段階にあると考えている.一方で本研究課題に関連の深いモデル研究の成果も得られていることも併せて考えると,完全に遅れているとは言い切れない面もあり,やや遅れているとの評価が妥当であると考える. 上述の未完遂の2つの実験については,年度をまたぐ形になるが,2年目に実施する研究と並行し,上記初年度の計画だった実験も引き続き実施してゆく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
2年目に予定していた研究計画である物体内外の刺激要素に起因する脳波観測データ同士の同期性の検討,そして局所面パッチ群の帰属領域サイドと面パッチ同士の統合知覚との関係性の検討の2種類の実験については,予定通りに研究をスタートさせる.一方で初年度の計画の2つの実験についても,予備実験によるパラメータ探索を行い次第,本実験に入り所望の知見を獲得する予定である.3年目に予定している計画についても現在のところ変更は考えていない.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験が予備実験段階にあり,本実験実施に至っていないため,被験者への謝金が発生していないこと,そして上記の状況により計画していた国際会議等での研究成果の発表を行えず,そのための旅費等の出費が生じなかったことなどが理由である.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験として予定されている脳波計側用の脳波計アンプ130万円,電極セット35万円の購入費用を充て,実験被験者謝金に約7万円を充てる.研究成果の発表費用として国際会議19万円,国内研究会3万円,英語原稿校閲量4万円の支出により,交付予定額となっていた160万円に次年度使用額約38万円を加えた約198万円の全額を使用する計画を立てている.
|