研究課題
高齢者の認知機能の維持・改善に対する社会参加・ボランティア活動の有効性とその長期効果を検証することを目的に,平成16年度から開始した子どもへの絵本の読み聞かせを主とする高齢者向け学校ボランティア事業「りぷりんと」の10年目の追跡研究を行っている.今年度は10年目を迎える2期生を中心に,前後の1期生,3期生と合わせて合計129名の高齢者に対し,認知機能評価を実施した.対象者は,全国3地域において,読み聞かせボランティアに参加する高齢者(介入群)と健診のみ受診する高齢者(対照群)であり,初年度から継続している記憶,知識,判断,言語,速度,実行機能に関する個別認知機能検査(約50分)と日常の認知活動状況や記憶力の自己評価などを含む質問紙調査を実施した.現在,認知機能検査における言語反応課題について書き起こし採点を行っている.今年度は,すでに追跡を完了している7年目までのデータを分析し,介入効果を検討した.7年目の参加率は51%で,そのうち認知症やうつ病などが疑われた対象者を除き,介入群と対照群の得点を比較した.その結果,言語や実行機能の課題で介入効果が見られた.さらに今年度は,追跡10年目から導入した認知機能検査「MMSE-J」の地域住民データを分析する機会を得たので,年齢階級,教育年数別の得点分布を調べ,地域在住高齢者の標準得点を検討した.また,対象者が地域でボランティア活動を継続参加できるよう,地域間ネットワークや後継者育成の研修制度を充実するため,NPO法人「りぷりんと・ネットワーク」を立ち上げ,組織強化を図った.
2: おおむね順調に進展している
今年度10年目を迎えた2期生の10年目の認知機能評価を計画通り実施した.現在,採点・分析を行っている.
引き続き,3期生の10年目の評価を実施して,10年目の追跡調査のデータ収集を完了させる.また,介入対象である絵本の読み聞かせボランティア活動団体NPO法人「りぷりんと・ネットワーク」の継続支援を行い,縦断研究の継続化を図る.
物品費について,購入予定だった携帯型パーソナルコンピュータの購入を見合わせたため余剰が生じた.また,調査時期が年度末の3月に集中したため,人件費のうち,事後の採点やデータの電子化作業に割り当てる臨時雇用の人件費に余剰が生じた.
これらの余剰金は,国際学会での発表参加費等に充当するため,その他の費目に計上する.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
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