研究課題/領域番号 |
26330186
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小林 貴訓 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20466692)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人物行動計測 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,ヒューマンロボットインタラクションなどへの応用を想定し,レーザ測域センサと全方位カメラを取付けたポールを観測領域中にいくつか置くだけで,複数人の実時間追跡を行い,人物行動の相互関係を学習・識別する手法を開発する. 本年度は,人物の肩の高さにレーザ測域センサを取付けたセンサポールを試作し,人物行動計測手法の開発を行った.開発した手法では,人の胴体の輪郭形状を楕円でモデル化し,レーザ測域センサから得られる部分的な観測情報との整合性に基づいて,パーティクルフィルタを用いて人の身体の位置と身体の向きを追跡する.レーザ測域センサからの距離データを画像にマップし,処理をGPGPUにより並列化することで,同時に20人程度を実時間で追跡可能とした. また,得られた複数人物の追跡情報に基づいて,グループの判別を行った.グループの判別は,追跡中の人物のすべての2人の組に対して一緒に移動するグループ(ペア)であるかを識別器により判定し,それらの結果を統合してグループを判別する.識別に用いた特徴は,「2人の間の距離」,「相手に対する身体の向き」,「2人の身体の向きの差」,「2人の速度の差」,「2人の進行方向の差」であるが,特に,追跡時に身体の向きが高精度(誤差5度程度)で計測できるため,立ち止っていて速度や進行方向などの情報が得られない場合でもグループの判別を可能としている.このことは,従来手法に比べて大きく優位であると考えている. さらに,研究成果の応用として,ロボット車椅子をグループの一員として複数人で構成されるグループに追従させる実験も行い,本手法の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人物の肩の高さにレーザ測域センサを取付けたセンサポールを試作し,観測領域中の複数の人物を実時間追跡する手法を開発した.これは,今後の展開において基盤となる技術であるため,これを確立できたことは意義が大きい.また,今後,複数のレーザ測域センサを用いて,より広範囲を観測対象とした遮蔽に強い追跡システムを開発するための準備が整った.グループ判別においても,本システムによる追跡結果を用いてグループ判別が可能なことを確認できたことは意義が大きい.特に,立ち止っていてもグループ判別が可能であるかどうかを判別できる点は,身体の向きまで追跡が可能である本手法の優位な点であると考えられる.これらのことから目標を順調に達成できていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の最後に,大学内での学生ポスタセッション会場にシステムを設置し,実際の人物行動データの収集・記録を行った.そのデータに対して本年度開発した追跡手法を適用したところ,人物相互の遮蔽により追跡が中断されることが多いことが判明した. そこで,来年度は,より広範囲を観測対象とし,人物相互の遮蔽にも対応できるようシステムを拡張する予定である.具体的には,複数のレーザ測域センサを用いることで遮蔽の影響を少なくし,得られた計測情報を統合することで,観測領域内のできるだけ多くの人物の追跡を行えるようにする.特に,領域内に多数の人物が存在する場合には,人物相互の遮蔽により身体の一部分のみが観測される場合や,他の人物に完全に遮蔽されて観測できない領域も存在する.そこで,複数人物の遮蔽関係を複数のレーザ測域センサによる計測情報に基づいて,観測領域全体で整合性を評価し,身体の一部分のみが観測される場合でも正しく追跡が継続できるよう,手法の改良を進める. そして,グループ行動の識別についても,改良した追跡システムを用いた評価と精度向上のための改良を進める.国内の著名な美術館とコンタクトをとり,館内の人物動線計測の準備を進めていることから,来年度は実際の人物動線データでの評価実験をめざす.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,本年度の物品費としてレーザ測域センサ約34万円とセンサ設置用ポール約4万円を計上していたが,保有していた同じ機器の使用が別プロジェクトで終了したため,本年度は物品の購入を行わなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は,複数のレーザ測域センサを導入予定であるため,繰り越し分は来年度に執行し,より広範囲での観測を行うシステムを構築に使用する予定である.
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