研究課題/領域番号 |
26330189
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
杉本 千佳 横浜国立大学, 未来情報通信医療社会基盤センター, 准教授 (40447347)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 快適度 / 生体情報 / 感性 / 認識モデル |
研究実績の概要 |
外界環境要因により人間が感じる快不快等の感性を客観的に評価することは、ヘルスケアや環境設計・制御等において非常に有用である。従来のアンケート形式での主観評価によらない、生体情報から人の感性状態を定量評価する手法の構築を目指している。前年度の検証結果から、温熱環境に起因する快適度評価のための生体パラメータとしては、温度、心拍が有効であったが、照明環境や音環境では脳波の有効性も高かった。そこで、脳波から感性を評価する手法についてさらに検証を行った。 脳波から抽出したパラメータを用いた場合、人によって選択された特徴量と識別精度が大きく異なる結果となった。脳波に影響を与える因子は多様でその個人差は大きく、個人内でも変動の幅があり時間的変化も見られた。そこで、感性認識の精度向上を図るために適切な特徴量と識別器の検証を行なった。特徴量としてエネルギースペクトル密度、微分エントロピー、フラクタル次元、およびそれらを変形した数値を、識別器としてはSVM,ランダムフォレスト等を用いて評価し、識別精度の高い認識モデルを導出した。さらに、特徴表現の学習に優れたディープニューラルネットを用いたモデルにより高い精度が得られることを確認し、適切な特徴量の選択により脳波を用いて精度の高い識別ができることを示した。 各環境要因に中で快適度を高めるための制御においては、不快レベルの高い要因を低減することが重要である一方、別の感覚器への作用を利用して他の環境要因を変化させることで不快感を低減させることが可能であることが示されたため、目的に応じた適切な環境制御の一手法を提案した。 また、ウェアラブルセンサ等の複数のセンシングデバイスを組み合わせて、生体情報および環境情報からリアルタイムの評価に基づきフィードバックを行なうためのシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に基づき、温熱環境、音環境、照明環境における快適感や覚醒感、集中度等の感性について、環境要素が人に与える影響を分析し、適切な生体パラメータを抽出して感性認識するモデルを構築し、計測実験により評価した。また、これらの環境に加え、対象とする感性を変えながら感性認識モデルに用いる特徴量や識別器等を比較評価し、最適な認識モデルについての検証を行なった。複数のモデルについて、認識精度やリアルタイム性、データ取得のしやすさ・適切性、データの安定性、計算処理負荷等の基準をもとに評価し、利用目的に応じた適切な感性認識モデルを検討した。さらに、生体・環境パラメータを計測し統合するためのシステム構築を行い、おおむね計画通り進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に構築した感性認識モデルを用いて、検証実験および評価を行なう。構築したモデルは、必ずしもリアルタイム評価に適した万能なものばかりではなく、精度の多少の低下を許容することでセンサ数を減らし測定負荷を下げるモデル、データ蓄積により精度の向上がさらに見込めるモデル等がある。よって、構築した認識モデルの中で目的に応じた適切なモデルを選択し、複数の要因を変化させたときに適切に評価できるかを検証する。また、開発したヒューマンセンシングシステムを用いた実験を行ない、有効性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度発表する予定であった2016年3月開催の国際学会ISMICT2016のScopeが変更になり、研究成果の発表の場としてより適切な別の国際学会に投稿先を変更したため、発表および予算執行の時期が次年度になった。 また、リアルタイム感性評価に基づくフィードバックシステムは、当初自動での環境制御システムの構築を想定していたが、制御要素が互いに影響し多岐にわたること、制御項目により対象の環境パラメータの時間変化を自動により簡易に一定に保つことが困難であることが予備実験において判明したため、評価に必要な要素を絞った後に、部分的に自動調整することが可能な評価に適したシステムとして次年度システム構築するためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度開催の国際学会SMC2016(2016 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics)に投稿しており、次年度2名分の旅費と参加費として使用する。 また、評価に適するよう制御部分を絞って構成するシステムの構築費用として使用する。
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