研究課題/領域番号 |
26330190
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 正信 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00242397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 個人認証 / 固有平面 / 歩行動作 / Kinect / 夜間 / セキュリティ / 赤外線センサ |
研究実績の概要 |
Kinectから得られた歩行動作をデータベース化し、固有空間法により歩行者の識別を行った。身体を多関節モデルで表す。このモデルは部位同士が関節でつながり親子関係となる。子部位の姿勢は親部位との相対姿勢で表される。各部位の体軸の向きを親部位の座標系で表わし、部位の姿勢とすれば、身体の姿勢はセンサやシーンの座標系とは無関係に表される。この姿勢の時系列が動作データである。身体部位の数を胴体、腕や脚など14個とすれば、姿勢は42次元のベクトルで表される。さらに、Kinectによりビデオレートで姿勢列が得られれば、数歩の歩行動作でも膨大なデータとなる。しかし、身体の部位は互いに連動しているので、42次元のベクトル要素は独立ではなく互いに従属している。 実際、動作データをKL展開したところ、第2固有値までの累積寄与率が50%である。このことは、第1第2固有ベクトルの張る固有平面上に、動作特徴の50%が含まれていることを意味している。第1第2固有平面に描かれた歩行動作で、個人識別を行った。人数が増えるほど識別率は低下し、34名では50%まで落ち込んだ。そこで、下位の固有空間の利用も考えた。第10固有値までの累積寄与率を測定したところ93%に達した。第3第4、第5第6、第7第8、第9第10固有ベクトル平面での識別結果を統合したところ、34名の識別率は83%まで上昇した。 一方、身体サイズによる個人識別も行った。Kinectからは身体部位の長さがボーン長として得られる。身体各部位のボーン長を特徴ベクトルとして、個人識別を行った。その結果、動作による識別結果とほぼ同じ識別率を達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歩行動作から固有空間法により個人識別を行ったところ、当初34名の識別率が50%であった。そこで、固有空間の次元を第10次元にまで拡張したところ、83%まで上昇した。特徴空間の次元は42次元であるので、第42次元固有空間まで利用することが可能であるが、第10固有値までの累積寄与率が93%に達しているので、10次元までの固有空間に動作の特徴がほぼ含まれていると考えられる。したがって、第11次元以上の拡張は行わなかった。 身体サイズからの個人識別では、各部位のボーン長を特徴ベクトルとした。識別率は10名で90%以上を記録し、これは他の先行研究の識別率とほぼ同程度である。34名でも83%と動作特徴と同程度の識別率が達成され、50名でも75%であった。しかしながら、使用したボーン長は身体を静止させて測定しており、歩行中に測定したサイズではない。Kinectセンサからの歩行中の身体サイズは、測定時刻により変動するため、統計的な扱いが必要になる。歩行時のデータであれば、動作からの識別法と身体サイズからの識別法を融合させ、より高い識別率を目指すことができる。 動作データベースの構築では、新たに50名の歩行動作を測定した。これに既存の34名を加えると84名となる。当初、新たに100名の歩行動作の収集を目標としていたが、年度途中に新型Kinect v2が発売され、旧型よりも測定範囲が広いことが判明した。新型に移行して新たに測定することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
歩行動作からの認証法と身体サイズからの認証法を組み合わせて、識別率の向上を目指す。動作の特徴と身体サイズの特徴は、互いに独立性が高いため、両者の組み合わせはシナジー効果を生み識別率の向上が期待される。 これまで使用してきたKinectをv1とすれば、昨年度から発売されたKinectはv2である。新型Kinectは奥行き方向の測定レンジが深いため、これまでよりも長時間の歩行サイクルを測定することができる。これは、識別の信頼性向上に資する。ただし、接続するパソコンに高い性能が要求されるため、パソコンの若干の改修も必要である。また、新たなSDK上で開発環境を再構築する必要がある。一方で、Kinectの測定レンジは高々5m程度である。これは、赤外線の照射によるアクティブなセンシングの限界である。さらに遠方での動作を測定するために、パッシブなセンシングである遠赤外線ステレオカメラの使用を検討する。センサの解像度にもよるが、50m~100m先の歩行者の検出が可能である。 歩行動作は衣服やカバンなどの携帯物によって変化する。夏物や冬物などの衣服の種類、手提げやリュック、旅行カバンなど携帯物の種類や大きさ重さにより歩行動作が変化する可能性がある。また、衣服や携帯物によってはKinectで動作や身体サイズが測定できない可能性もある。まず、正しく測定できるための服装や携帯物の範囲を調べる。その上で、衣服や携帯物の種類による個人識別への影響を調べる。その際比較のために、前年度に測定した被験者に対し条件を変えて歩行動作を再度測定する。 一方、処理のリアルタイム化とネットワーク化に向けて準備を始める。パソコンに接続されたKinectのセットを複数台用意し、建物の中の異なる地点に配置する。一つの地点で通過した人物が他地点で認証できることを試みる。
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