研究課題/領域番号 |
26330191
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
本谷 秀堅 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60282688)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医用画像処理 / 画像セグメンテーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医用画像中の臓器領域セグメンテーションを高精度におこなうために、臓器の統計形状モデルを階層的に表現することである。今年度は、肝臓・腎臓・脾臓を対象に点群統計モデルを構築する作業を進めた。モデル構築には、新学術領域「計算解剖学」で構築された、臓器領域を手塗りしたデータ集合を利用した。モデル生成には複数臓器であることを考慮して、学習用の臓器表面群に対応点を生成する必要がある。今年度は、この対応点生成が難航した。ただし、単一臓器のセグメンテーションについて、腫瘍など異常部位に対する頑健性の向上や部分画像に対する位置合わせについて、次第に成果が出始めた。階層モデルの低層部は、モデルと実際の画像との位置合わせがおこなわれる。この位置合わせに際しては、病変部などモデルによる記述の困難な外れ値に対する頑健性が必要である。今年度は、この頑健性を疎性正則化を利用して向上させる手法を考案・改良し、その性能評価を開始することができた。また、従来法の多くは画像中に対象臓器の全体が含まれていることを大前提としているが、臨床応用上は対象臓器の一部分しか撮影されていない事が多い。そこで、部分画像に対するモデルの位置合わせ法についても性能評価を開始し、国内の研究会ではあるが、報告を開始することができた。 また、体幹部の臓器以外に、脳領域についても新たなモデルの構築を試みた。具体的には、脳領域を覆う膜構造の階層性を複数のグラフの重層構造で表現することを新たに試みた。頭部CT画像中の脳構造の記述にはSPMと呼ばれるソフトウェアを利用することが世界的に標準となっている。SPMの灰白質や白質、頭蓋骨などのセグメンテーション性能は低くないが、硬膜など脳の外縁の膜構造の抽出には頻繁に失敗する。これら膜構造をグラフの重層構造で表現し、CT画像より正確に抽出する手法についても実装が済み、性能評価を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数臓器のモデル構築に際して、複数の臓器表面に対応点を生成する必要がある。この対応点生成が容易ではない事は理解していたが、その困難さが予想よりも大きかった。この報告を記載している現時点では、この困難さを、ある程度克服しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓・膵臓・腎臓を対象とする点群統計モデルを構築し、医用画像セグメンテーションのシステムを実装し、性能評価を実施する。これら臓器は症例によっては互いに接触し、画像中のエッジなどが接触部で消失する。このことに対処する手法を開発することにより、本研究の成果としたい。臓器間の接触への対応については、前年度までに単一臓器を対象として開発した位置合わせの頑健化手法を応用する。すなわち、接触部におけるエッジの欠損部を外れ値として自動的に検出し、その部分を尤度計算から除外しつつモデルパラメータを推定する手法を開発する。
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