臓器の統計形状モデルの表現をq-正規分布へと拡張することにより、学習データ数がモデルパラメータと比較して過小である場合などに対して頑健なモデルを構築する枠組みを開発することに成功した。臓器表面の点群統計モデルを構築する際に最も広く採用される手法はActive Shape Modelであり、この手法は共分散行列の固有ベクトルを利用することからも分かるとおり、学習データ群が正規分布に従うことを仮定している。臓器形状の多様性を網羅するほどの多量な医用画像を収集することは極めて困難であり、学習データ数が過小であるときには共分散行列がデータ群に過適合する。このことは、正規分布から外れたデータに対してモデルが過剰に適合することにより、モデルの特異性が劣化することとも関係が深い。この問題点は従来より広く指摘されてきた。そして、この問題点に対する改善法の多くは、「学習データ数を増やす」ことや「階層化をおこなう」ことなど、従来の線形な枠組に沿った提案であった。一方、本研究で開発した手法は、従来の手法を内包する、より汎用性の高いものである。q-正規分布はメタパラメータqを有しており、qの値を変化させることにより、正規分布を表現することも可能であれば、正規分布より裾野の広い分布を表現することも可能である。同一の学習データを利用していても、異なるqの値を利用して統計モデルを構築すると、汎化性能の異なるモデルが獲得される。そこで本研究ではAIC (Akaike Information Criteria)を利用することにより、データ群の表現に最適なメタパラメータqの値を決定し、汎化性能を最大化することを提案した。また、この手法を肝臓の実データに適用することにより、肝臓の部位ごとに統計分布の表現に最適な分布が異なることを確認した。
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