本研究は、実施期間全体を通じて、目的である「ユーザーが数理・情報幾何的な知見を持たなくても、好適な特徴抽出・識別(類別)結果の直感的解釈を可能とした画像解析手法」を実現する為、入力データ(特徴量)の統計的な特性を可視化することができる多変量解析手法を軸とした特徴量変換手法の提案と、識別結果の確からしさを確率的に表現できる確信度推定手法の検討を行った。 平成28年度は、「識別結果を直感的に理解可能とするためのDistance metric learningの枠組みによる確信度推定手法の検討」と、「入力特徴量に依存せずに識別性能を向上させるための特徴量変換手法の提案」を行った。 当該年度に検討した確信度推定手法は、特徴空間内におけるサンプル間の距離関係がマハラノビス汎距離で表現できる場合を仮定し、この距離基準の下、判別的な確信度を推定できるものとした。この検討した確信度推定手法を査読付き国際会議であるThe 16th IEEE International Conference on Data Miningに投稿したが、不採録となってしまったため、提案手法のさらなる改善と再実験等を実施するものの、外部発表は一時保留とした。 その他、本年度は、昨年度の研究成果である「主成分分析、および線形判別分析を半教師あり機械学習手法の枠組みで統合した特徴量変換手法」の改良と、医用画像解析への応用を実施した。手法の改良では、制約条件において任意の値となるバランス項の数理的意味を解析し、当該バランス項の自動決定の枠組みを導入する改良を行った。改良した提案手法を生理検査画像の識別問題に適用したところ、提案手法は、他の既存手法と比較し、安定した識別性能向上効果を示した。この研究成果は、オンライン国際学術論文誌であるPLOS ONEに投稿し、採録された。
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