研究課題/領域番号 |
26330196
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金田 和文 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30185946)
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研究分担者 |
三鴨 道弘 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00735269)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ハイダイナミックレンジ画像 / トーンマッピング / 視覚特性 / スペクトル |
研究実績の概要 |
本研究では、分光分布情報をもつ輝度ダイナミックレンジの広い高品質画像を、人間の視覚特性を考慮することにより、通常のディスプレイモニタに表示した場合でも、現実感あるリアルな表示を行うことのできる手法を開発することをめざす。コンピュータグラフィックス技術の進展により、高解像度・高品質のHigh Dynamic Range (HDR)スペクトル画像を生成できるようになった。しかし、画像を表示するディスプレイモニタは高解像度化には対応されてきているが、輝度ダイナミックレンジや表示可能色については従来から大きな進展はみられない。本研究課題では、最新のコンピュータグラフィックスによって作成されたHDRスペクトル画像を、人の知覚特性を考慮してリアルに表示する手法を開発する。 これまでの研究では、網膜の色情報処理メカニズムに基づいた視覚神経系の回路モデルを導入したHDRスペクトル画像表示のための視覚特性モデルを構築した。すなわち、スペクトル光が視細胞の3種類の錐体(L, M, S)に入力され、錐体からの出力信号が反対色表系(r-g, y-b, v)に変換されて脳へ送られる色覚の2段階モデルに基づいて、HDRスペクトル画像からLow Dynamic Range (LDR) RGB画像に変換する手法を開発した。新たに開発した視覚特性モデルの各素子の応答は、心理物理学実験における波長弁別閾の計測結果に基づいて関数近似した。すなわち、視覚特性モデルの光波長の違いによる応答が、波長弁別閾の計測結果と一致するように、近似関数のパラメータを調整して設定した。これにより、波長の違い、すなわち色感度特性を考慮した視覚特性モデルが構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構築した視覚特性モデルに基づく表示手法をマルチコアCPUを搭載した計算機にインプリメントし、HDRスペクトル画像の表示を行うプロトタイプのソフトウェアを開発した。そして、直射光に照らされた明るいシーンから日陰や夕暮れなどの薄暗いシーン、そして月明かりの暗いシーンに至るまで、広範囲な輝度領域をカバーし、かつ明るさによる人の視覚のスペクトル感度変化を考慮することにより色相変化をともなった表示が行えることを確認した。 高解像度のHDRスペクトル画像の記録には大容量の補助記憶装置が必要となる。この問題を解決するために、HDRスペクトル画像を圧縮してコンパクトに記録し、表示デバイスの解像度に応じて、高速に表示する手法の開発も行った。
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今後の研究の推進方策 |
開発したHDRスペクトル画像表示手法と従来手法を比較して、その効果を検証するとともに、裸眼3Dディスプレイへの立体視表示により、その効果検証をあわせて行う。立体視表示の際には、左右両眼用の2枚の画像が必要となる。この2枚の画像の表示パラメータを変化させることにより、知覚する輝度ダイナミックレンジにどのような変化があるかを実験する。これにより、知覚される輝度幅を最大とするように、左右両眼用の視覚特性モデルのパラメータをチューニングする。この結果を視覚特性モデルにフィードバックし、視覚特性モデルを立体視表示に対応できるように拡張する。さらに、複数枚の画像表示が高速に行えるように改良する。 工業デザインでは、設計する製品形状を立体的に把握できることが望まれる。開発したHDRスペクトル画像表示手法を工業デザイン分野における表示に試用し、その効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたマルチコアCPU搭載の計算サーバの導入をプロトタイプ表示システムの実装終了後とし、ステレオ表示システムの導入とあわせて平成27年度に導入することとしたため。 国際会議の出席を予定していたが、スケジュールの都合が合わず出席できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
マルチコアCPU搭載の計算サーバをステレオ表示システムとあわせて平成27年度に導入するために使用する。 コンピュータグラフィックスに関する国際会議に出席して研究成果を発表するために旅費を使用する。
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