研究課題
本年度は,画像の集合論的な処理であるモフォロジカルフィルタを用いた画像の特徴抽出法を画像先見情報として用い,正則化に基づく画像復元問題への適用を行った.モフォロジカルフィルタは,画像を座標と輝度の3次元空間における集合と捉え,集合演算により画像処理を実現するフィルタである.モフォロジカルフィルタを用いた特徴抽出法として,画像の突起と窪みを検出するトップハット変換,画像のエッジを検出するモフォロジカル勾配が提案されてきた.本年度は,両者を,それぞれ画像の先見情報として正則化法に与え,雑音除去,ボケ復元に応用し,その性質の評価を行った.トップハット変換による画像先見情報では,画像が微細な構造要素の和集合として構成されることを仮定し,この仮定に基づき画像を復元する.従来までに提案されてきたトップハット変換は,ガウス性雑音の影響を復元結果から除くことはできなかった.そこで,本研究では,フィルタそのものを連続微分可能な関数で近似し,線形フィルタとしての性質を持たせることで,ガウス性雑音除去も可能とした.連続微分可能な関数でモフォロジカルフィルタを近似することで得られたフィルタをソフトモフォロジカルフィルタと定義し,ソフトモフォロジカルフィルタを用いた正則化について検討し,雑音除去等で有効性を確認した.モフォロジカル勾配による画像先見では,画像復元において最小化の対象となる関数が凸関数であるものの,不連続を含む関数となる.そこで劣勾配法を適用し,画像復元を実現した.モフォロジカル勾配の劣勾配の導出には,モフォロジカル演算と同じく乗算が不要であり,復元問題を高速に解くことができる可能性がある.また,モフォロジカル演算における構造要素の形状についても検討し,従来の正則化で用いられてきたTV(Total variation)よりも,微細な構造を保存できる可能性があることを示した.
2: おおむね順調に進展している
本課題の目的の一つは,画像内の特徴を集合論的な画像モデルの構成要素として学習し,画像の先見情報として用いることで従来の画像処理システムを超える能力を持つシステムを構築することにある.学習へ至る過程として,構成要素を固定した場合の画像処理を実現する必要があるが,本年度の研究成果は,この必要な要素を達成している.また,本年度の成果に基づき,知られていなかったモフォロジカルフィルタの性質,利用法を明らかにした.これらの知見は,今後の研究に活用することが期待できる.
集合論的な画像モデルとして,モフォロジカルフィルタを用いたモデルを用い,モデルを画像先見情報として用いて画像復元等へ応用してきた.今後,モフォロジカルフィルタの構造要素の更新により,画像特徴を学習し,画像処理の性能向上を図ることを進める.また,現在までは,モフォロジカル画像処理の分野で良く用いられてきた画像特徴に関して研究を行ってきたが,より複雑なフィルタのネットワークを利用することで,さらに画像処理性能を向上を図ることも今後の方針である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E97-A ページ: 2633 - 2640
10.1587/transfun.E97.A.2633