研究課題/領域番号 |
26330214
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
荻原 昭夫 近畿大学, 工学部, 教授 (60244654)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音楽電子透かし / 音響情報処理 / 情報ハイディング |
研究実績の概要 |
我々は、mp3圧縮などの種々の信号処理に対する耐性を有する音楽電子透かし手法をベースにして、再帰的に透かし情報の埋め込み処理を行うことで、埋め込み容量の増大を可能とした多層型音楽電子透かし手法を既に提案している。本研究では、この多層型音楽電子透かし手法の階層数を動的に制御することで、所望の音質を確保するという条件下で、付加データ容量を最大化し、音質と付加データ容量との両立を実現する手法の開発を目的としている。 しかしながら、多層型音楽電子透かし手法を適用する度に、主観的に音質を評価しながら階層数を制御することは現実的ではない。すなわち、本研究の目的を達成するためには、コンピュータによる客観的音質評価を行い、自動的に音質劣化を評価できるような仕組みが必要となる。 そこで、前年度の研究成果により得られた音質評価に関するデータベースをもとに、平成27年度は「埋め込み処理後の楽曲の音質を数値にて客観的に評価する手法の開発」を実施した。具体的には、国際電気通信連合(ITU)より勧告されているオーディオ信号を対象とした客観品質評価法であるITU-R BS.1387-1(PEAQ)をベースとして、上述のデータベースを用いて新たなニューラルネットワークを構築することにより、多層型音楽電子透かし手法を適用した楽曲の音質評価に適した客観的評価手法の開発を実施した結果、コンピュータによる客観的音質評価で自動的に音質劣化を評価することが可能となった。 なお、上述の研究成果に至るまでに得られた知見については、国際会議プロシーディング2件および国内学会発表8件を通じて広く一般に公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究目的は、付加データの埋め込み処理後の楽曲に対する音質劣化が聴取者にとって主観的および生体的にどのように知覚されているかについて調査した結果(平成26年度の研究成果)をもとにして、埋め込み処理後の楽曲の音質を数値にて客観的に評価する手法の開発を行うことである。実施すべき具体的な研究項目は、国際電気通信連合(ITU)より勧告されているオーディオ信号を対象とした客観品質評価法であるITU-R BS.1387-1(PEAQ)を参考にして、多層型音楽電子透かし手法を適用した楽曲の音質評価に適した客観的評価手法をニューラルネットワーク上に構築することである。本研究項目は平成27年度に実施済みであり、当初の計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
多層型音楽電子透かし手法においては、階層数を増やすにしたがって、付加データ容量は増加する反面、音質は基本的には劣化する。ただし、音楽信号と付加データとの組み合わせによっては、階層数と音質の関係は必ずしも反比例するとは限らない。そこで、当初の研究計画の通り、本年度の成果として得られた「多層型音楽電子透かし手法を適用した楽曲の音質評価に適した客観的評価手法」を活用して、平成28年度は多層型音楽電子透かし手法を適用した際の付加データの埋め込み処理後の楽曲に対する音質を評価しながら、所望の範囲内となるように音質を制御しつつ、階層数をなるべく増やすことにより付加データ容量の最大化を図る「多層型音楽電子透かしにおける階層数による音質制御法」の構築を試みる予定である。
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