研究課題/領域番号 |
26330215
|
研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
児玉 和也 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 准教授 (80321579)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 映像メディア / 3次元映像 / 画像処理 / 画像復元 |
研究実績の概要 |
膨大な情報を要する立体映像メディアは、各種デバイス等の制約を越える品質向上手法が強く求められる。
平成26年度は主として、立体映像情報に適した品質劣化抑制という目的に対する本研究課題の基盤となる焦点ボケ構造を介し冗長性を活用する基本フィルタの構成と、その雑音抑制への適用について詳細な検討を行い、当該フィルタの有効性を確認した。多視点画像群と多焦点画像群の間で相互変換が成立することは既知であり、また、多視点画像の有する冗長性は焦点ボケ構造上で的確に取り出せることから、このフィルタの適切な設計とその特性の検証が、雑音のみならず平成27年度以降に進める様々な品質劣化の抑制への有意な展開には必須である。
具体的には、多視点(multi-view)画像群と多焦点(multi-focus)画像群の間の変換がどちらも線形のフィルタで記述される、という知見に基づき、まず、これらを連結する形で基本となる簡便なフィルタが構成できることを示し、これが立体映像情報の冗長性の抽出に関し有効に作用する条件等を詳細に検討した。続いて、同検証を参考にしつつ、より適応的な構成のフィルタに発展させ復元品質の向上と安定化に取り組んだ。すなわち、低周波成分や遮蔽領域周辺など、基本フィルタによる復元画像に一定の歪みを含む場合、復元処理前の各視点画像等からこれを補う統合処理等を導入し、さらなる復元品質の向上を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な立体映像情報である多視点画像群は画像間で類似領域を含む強い冗長性を有しているが、現在までに、それらの統合を実現するフィルタの構成に成功し、実際に当該のフィルタが雑音等の劣化抑制に有効に機能しうることが示されたため。
具体的には、本研究では、雑音抑制、欠損画素・視点復元など立体映像情報の高品質化に関する統一的な基盤技術として、多視点画像群と多焦点画像群の相互変換が古典的画像復元問題の自然な拡張とみなせることに着目し、その豊富な知見を柔軟に取り入れつつ、上述の本質的な冗長性も巧みに活用した効率的な品質向上手法を探求している。
とくに平成26年度は、設備備品として導入した大容量で高速な記憶装置により、小規模、理想的なデータでの実験に留まらず、本来の立体映像情報ともいえる光線空間に相当する密な多視点画像群のように大規模な映像情報で実証的検討を行い、この結果、膨大な情報を要し、各種デバイス等の制約を越える品質向上手法が強く求められる立体映像メディアに着実に貢献する性能が確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は平成26年度の成果をもとに、まず、最大限その枠組を有効に機能させるため焦点ボケ構造そのものに関わる品質劣化の抑制手法も詳細に検討する。
実際、多視点画像群の有する劣化は、平成26年度に得られたフィルタが焦点ボケ構造上でその冗長性を排することにより大幅に抑制されるものの、この構造にも一定の品質低下が伝搬、残存する。すなわち、復元品質を最大化するには、多焦点画像群の含む品質劣化への対応が新たな課題となり、とくに、このような劣化成分が重畳される傾向のある高周波成分を中心として適応的なフィルタ構成による安定化を実現するため、multi-view/multi-focus変換などの前提となる立体映像情報としての制約を導入した反復解法による最適化等を組み込んでいく。復元品質の向上の必要性に応じ、バイラテラルフィルタなど既存のアプローチの活用も検討する。
あわせて、以上のような立体映像情報の冗長性の活用に基づく品質劣化抑制手法は、雑音抑制のみならず、デモザイキング等を含めた欠損画素、欠損視点の復元問題にも適用可能と考えられることから、これらを統一的に展開する枠組を探求し、その結果をまとめ成果の発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、第一に、設備備品として導入した大容量で高速な記憶装置が内蔵型で比較的安価に入手可能となったことや消耗品の価格変動などに起因している。また第二に、成果発表の日程およびその旅費等の変動も一定の影響があった。以上の結果、差引で少額ではあるが、次年度に使用する予定の研究費が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
使用計画として、当該研究費は次年度に請求する研究費と合わせ、カメラ位置制御装置等の導入にあてる。これを用いて撮影された実画像による実証的検討に取り組み、本研究で提案する手法の基本的性能をできる限り明確にする。当初より、実画像による実証的検討にあたっては、最も廉価な実装であるカメラ位置制御装置を設備備品として導入する予定であったが、当該研究費を合わせることにより、とくにその自動制御機能などを充実させ、効率的に多様な実験条件を検討していく。これにより、提案手法の基本的な性能が詳細に明確化され、以降、提案手法の有効な拡張へとより確実に展開することが可能となる。
|