研究課題
本研究課題では,Shading Illusion技術を実用化するために,プロジェクタカメラ系の幾何学校正と光学校正を動的に実現する方法を明らかにすることを研究の目的としている.平成27年度以降には,「B1. DLP プロジェクタの投影シーケンスを用いた光学応答計測」と「B2. C2Pマップを用いた動的な光学較正」の実現,「B3. デモ機の試作と評価」を予定している.B1の検討の結果,提案手法により撮影画像から投影光の成分を除去した画像が得られることを実験で確認したが高品質な結果を得るためには5~10フレーム程度の蓄積が必要であり,この手法の採用には応答性の改善が必要であることが分かった.そこで,3Dプロジェクタの時分割多重投影機能を応用することで,環境照明計測と環境照明に影響されない投影制御を実現した.B2に関しては,27年度のはじめから中旬までは,投影画像の偶数・奇数フレームに埋め込んだ相補パターン投影とワンショット3D計測手法の応用によりC2Pマップからのずれを検出する方法を検討したが,この方法は原理的に無駄がある上に,アーチファクトに対して不安定であることが分かった.また,逐次最小二乗法を利用することで連続的にも求める方法も検討したが,これに関しては計算的コストが高いことが明らかになった.そこで,平成27年度後半からは投影のずれによって発生する反射率推定の誤りを評価することでずれ量を求め,ずれ検出のためのパターンを投影画像に埋め込むこと無くC2Pマップを補正する方法を考案した.その後,シミュレーションによって考案手法が上手く機能することを確認した.また,平成27年度には,Johannes Kepler Univertsity-Linzを訪れ,研究協力者であるProf. Oliver Bimberに諸課題についてアドバイスを頂いた.
2: おおむね順調に進展している
平成27年度以降に予定していた研究項目のB1では,新たな課題が発生した.しかし,計画していた方法の有効性が確認され,この問題を回避する方法を考案した.B2については,実用的な手法が見つかっており,シミュレーションにおいて有効性が確認されている.また,B3については既にデモ機を試作している状況である.このような状況を鑑みるとB1,B2,B3の項目はいずれも平成28年度に完了できる目処が立っており,概ね順調に進展していると判断できる.
今後は研究項目B1,B2,B3を完成させて研究成果をまとめる.B1に関しては,新たに考案した手法について研究を進めるとともに,当初計画していた方法の応答性の改善についても検討する.B2に関しては,反射率推定結果の評価によりC2Pマップを補償する方法を推し進め,実機による実験より提案手法の有効性を評価する.B3に関しては,提案手法全体の評価を行う.さらに,共同研究・開発によるShading Illusionの商品化もしくはサービス化については,現在企画しているイベントにて研究成果を社会に発信するとともに,利用者からのフィードバックを得たい.
ほぼ計画通り研究費を執行したが,購入品の金額の誤差などにより差額が発生した.基金制度では残額を翌年度に持ち越すことができるとのことを伺っていたので,無用な物品購入による使いきりを控えた.そのため,上記金額の次年度使用額が生じた.
上記使用金額を,平成28年度の物品購入などに充てて有効に使用する.
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日本バーチャルリアリティ学会論文誌
巻: Vol.21, no.2 ページ: N/A
システム制御情報学会論文誌
巻: Vol. 29, No. 2 ページ: 93-100
IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics
巻: Volume:21 , Issue: 11 ページ: 1269 - 1278
10.1109/TVCG.2015.2459892