研究課題/領域番号 |
26330225
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
原田 耕一 広島大学, 工学研究院, 名誉教授 (90124114)
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研究分担者 |
宮崎 龍二 広島国際大学, 心理科学部, 講師 (90352020)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 曲率フィルタ / 点群データ / 3次元ポリゴンモデル / MMS / 感性データ / 感性データベース |
研究実績の概要 |
初年度の研究によって曲線、曲面データベースを解析処理することにより、曲率変化の特徴を取り出すための曲率フィルタのプロトタイプが出来上がっていた。さらに、プロトタイプを実装するための設計方針も確立できていた。 本年度は曲率フィルタの精度を高めるためにフィルタを適用するデータを増やしていった。これまでは曲面設計における人間の感性を計算機によってシミュレーションすることを主目的としていたが、大規模震災からの復興のために道路の形状を測定することを目的とした点群データが多数入手出来たので、研究の適用範囲を広げ、道路設計問題に関しても曲率フィルタを適用できるように曲率フィルタの精度について再度検討し、新たなる基準で曲率フィルタの精度を高めた。 具体的には、人間の設計した道路をレンジスキャナによって計測し、得られる点群データを解析して、道路設計における人間の感性を解析し、道路の安全性、また道路の堅牢性という見地からの道路評価において曲面フィルタの果たす役割を解明できた。しかしながら、当初仮定していた人間のデザインデータは壺や車体程度の規模のものであったが、道路データはデータのスケールが桁違いであり、まず、大規模データの曲率を検出するために最適なデータの間引き方法を考案する必要があった。データを間引くということは一般には曲率検出の精度を下げてしまうので、採用できない処理であるが、道路データのような大規模データにおいては、点群データをそのまま用いることは処理時間も考えると得策ではない。データを間引くということと曲率計算の精度を維持するという互いに相反する条件を最適に満足するような検討課題に関して多くの成果を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究成果は、当初の目的であった人間のデザインデータ(2Dデータ)に含まれる曲率の変化パターンをデータベース化する手法を、大規模データの一つである道路データの解析に対して適用することによって得られた。すなわち、曲率の変化パターンがどの程度の有意性をもって大規模データに現れるかを検討するためにMMS(Mobile Mapping System)から得られた多数の点群データから曲率変化パターンを取り出すためのアルゴリズムを種々のものについて検討し、これまでの研究の中で最良と思われるものを提案できた。研究全体の流れからすると、当初予定していた人間のデザインデータに関する曲率パターンのデータベース構築をスケールフリーに出来たことになる。換言すれば、当初の研究計画にあった曲率解析の適用範囲がより広いものとなり、大規模データにも適用可能な曲率変化パターンデータベースを構築できたことに相当し、研究テーマの中のデータベース化に関しては予定以上の成果が得られたことになる。昨年度で研究期間が終了する予定であったが、曲率変化パターンを道路データに限らず、さらに広範のものに適用し、研究成果の拡張を目指すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はDiffusion Curvesの考えを参考にして人間のスケッチ図(デザイン図)から2次元空間における曲率変化パターンのデータベースを作成し、自動車の車体(3次元物体ではあるがデザイン的には2次元)のデザインを自動的に構築するための援用システムの雛形を設計することを目的として28年度まで研究を続けてきた。研究の中では、当初の計画にはなかった点群データ、つまり東北大震災で破壊された道路を再建設するためにMMS技術を駆使して集められた道路のデータの解析を含めた。これにより、道路データ(縁石なども含めた3次元データ)を自動生成するための基礎を構築するための技術的支援をも視野に入ってきた。さらに、研究期間中に熊本においても大地震が発生し、東北地震からの復興において重要である道路データの構築の必要性が更に増したといえる。昨年度が研究の最終年度で当初の目的を超えた(大規模データの曲率解析まで応用範囲が広がったという意味で)成果が得られたが、曲率解析の更なる広範化のために、新たなデータタイプを求めて調査を行い、研究成果の有用性をより一層高めることを目的としてもう一年の研究を続けることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
道路データをもとにした点群データに関する国際会議について、当初予定していた国際会議(平成29年3月開催予定)が諸般の事情により延期されてしまったので、平成29年8月および11月に開催される予定の国際会議で研究成果を公表することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
点群(大規模計測データに関する)についての国際会議(2件)の発表のための経費とする。
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