最終年度の研究として次のような結果を得た。昨年度まで研究において、曲率フィルタを応用した道路計測データの処理のため、点群データを適切に間引いて曲面を抽出する方法を得ていた。今年度は分布密度に異方性のあるデータに対して人工物を構成する平面領域を精密に抽出する方法を開発した。使用したデータは車両に積載したレーザースキャナによって得られたものであり、レーザースキャナの性質上、車両の進行方向の計測数が道路横断方向の計測数の数十倍もある異方性の強いものであり、点群データをそのまま用いたのでは精度の高い平面抽出は困難である。この問題を解決するため、Mobile Mapping System(MMS)計測データのうちのレーザー照射角度を利用して、点群をレーザー照射ユニット一回転分ごとに分割し、得られたスキャンライン点列をポリライン近似し、直線上に並んだ点列を一つの線分で近似するという方法を考案して実データに適用し、表面形状が変化する平面領域境界付近でも正確に領域抽出ことを可能とした。 このことにより、構造化されていない点群データに関しても、物体抽出を可能とするような汎用点群処理方式を確立できた。したがって、研究の主題である曲率フィルタの考え方を点群データからの物体抽出に応用する方式を具体的に提示でき、曲率フィルタの応用可能性を明確にするための実例を与えることに成功した。 なお、既存データベースを使用して設計作業を行うというのではなく、インターネット環境でデータを検索して得られたものを使用するという意味では「仮想データベース」を利用して設計作業を行うということになり、この考え方は斬新であると言える。
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