研究課題/領域番号 |
26330228
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
黒須 正明 放送大学, 教養学部, 教授 (30283328)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | UXカーブ / UXグラフ / 変曲点 / ライフイベント / 満足度 / 意味性 |
研究実績の概要 |
製品・サービスの意味性を明らかにするマイクロエスノグラフィの手法に対して適切なベースとしてUXカーブの手法をとりあげ、それを次の点に関して改善し、UXグラフとして提案した。(1)カーブそのものよりも、その変曲点に相当するライフイベントが重要であると考えられたため、記入にあたってライフイベントの座標とその内容を最初に記録させ、カーブはその後で記入させるようにした。(2)UX白書でも事前の期待感の重要性を指摘しているため、現在の前の期待感についても値を記入させることにした。(3)各イベントにおける座標はUX白書で言うところのエピソード的経験に相当するものと解釈することにした。(4)カーブそのものでは累積的UXは求められないため、現在時点での評価に対しては、現時点での総括的な評価を記入させるようにした。(5)カーブについては、各イベント間をつなぐときに、漸次的に変化している場合と、当該イベントによって急激に変化が起きる場合を区別するため、直線(場合によっては曲線)でつなぐ場合と、水平線で移行して次のイベントのところでほぼ直角に上下につなぐ場合とを区別させた。(6)隣接するイベント間の絶対座標ではなく、縦座標の差分を二番目のイベントの持っていた経験値と解釈するようにした。以上である。 また記入においては、使いやすさや利用頻度など複数の縦軸を用いることをやめ、満足度ひとつに絞った。これは満足できる物はそれなりに意味があり、反対に意味がある物は人を満足させる、という考えに基づくものである。 これまでにおよそ150近い事例を集めたが、集団法で施行していたために細かいニュアンスを聞き取ることができなかった。今後は個人法によって詳細なデータを得るようにし、意味性を明らかにする手法としての精度を高めることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
UXカーブに着目し、それをUXグラフに改善するための各種の改訂を行い、エスノグラフィックな手法としての有効さや効率性を基本的に確認した。UXグラフは、インタビューや観察といった一般的なエスノグラフィックな手法と異なり、総括的な(満足度という形での意味性に関する)評価を定量的に行えるという利点がある。また、個人法を採用した場合には、このカーブがインタビュー調査における媒介素材として有効に機能することが考えられるため、そうした可能性については次年度に検討することにする。
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今後の研究の推進方策 |
UXグラフについて、今年度改訂した内容について(たとえば累積的UXの値の取り方など)、集団法でなく個人法によって詳細なデータをとり、グラフの意味づけをさらに明確にする必要がある。また、前述したように、インタビュー法との連動性についての確認も実施する必要がある。 さらに次年度は、当初予定していたように、企業などで実施されているケースについて、その利用法を確認し、新たな課題発掘を行う必要がある。近年、UXカーブを利用している企業も増えてきているので、そうした企業に依頼してカーブの取り方や解釈の仕方について分析を行う。
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