研究課題/領域番号 |
26330230
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
満倉 靖恵 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60314845)
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研究分担者 |
滝本 裕則 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (10413874)
伊香賀 俊治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30302631)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 簡易脳波計測 / 知的生産性取得 / 客観評価装置 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,スマートフォンのみで脳波と視線を簡単に同時計測し,建物内の環境および知的生産性をオンライン評価するシステムを初めて構築する事である.26年度はスマートフォン上で脳波と視線を同時に計測し,既に別の業績として確立している脳波から興味・関心度取得方法(特許)を用いて,新しく建物の評価を行う方法を確立した. 建物内の評価に関する研究はこれまでにも多く提案されている.これらは一般に,エネルギー消費量や二酸化炭素排出量,コスト,資源性,意匠性など様々な因子に関して設計者が重みを決定し,総合評価する方法が採られてきた.しかしながら,評価指針になるのは常にアンケートであった.アンケートによる評価の場合,アンケートを作る側の語彙の与え方に左右されていたり,天気や体調などの要因により,アンケート中の同じ形容詞項目の捉え方に相違がある.さらには,個人ごとによって,アンケート項目に対する捉え方に相違があるため,より一般化する必要があった.本来であれば,アンケートを用いない方法が望ましい.そこで,26年度は申請者らが前年度までに別の研究としてこれまでに研究してきた,「脳波による客観装置」(特許出願中),「官能評価装置」(特許出願中)を用いて脳波を用いた興味・関心度を評価軸に,興味・関心の有無を得る方法を用いることで,新たに建物評価を行う基盤を構築した.また同時に,興味・関心の対象を明確にするために,アイトラッキングによって得られる視覚情報を如何に正確に分解能よく検出するか,研究を行った.さらには,一般的に用いられているアンケートベースの既存評価と本テーマから得られた評価との違いを明確化し,そこから得られる情報の意義を検討した. 構築したシステムを,建築会社の協力を得て実際の建物に適用し,実験を行うことでアンケートでは見出されていない隠れた因子の意味を解析することが可能になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一目標であった,脳波を用いた建物内における集中度実験を行い,集中度の変化を時系列に得ることができた. 第二目標のアンケートを用いることなく,脳波の計測からその人の興味関心,集中,眠気,ストレスをオンラインで取得するための定義付けを行うことができた. 第三目標に置いた,分解能よく視線を計測する装置の開発は,分担者によって注視点検出などを行うことができた. 以上の理由から,概ね順調に進展している.しかしながら,現段階では実験回数が10回程度であり,より多くの実験を重ねることが必要かつ,人の納得度などのエビデンスを取得する必要があると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は脳波と視線情報を用いて興味・関心,集中,ストレス度をオンライン評価する新しいスマートシステムを構築し,執務環境における「知的生産性」の新しい指標を定量評価する方法を検討し,確立する事を目的とする. 平成26年度が屋内の環境を対象にしていたのに対して,27年度は労務作業室内に限定し,環境によって変化する作業の効率を集中度とストレス度を以って評価する方法を提案する. 作業執務者は,ヘアバンド型の脳波計測装置を付け,締め付け感や嫌悪感が無いことを確認した後,通常の業務に従事してもらう.この時に使用する脳波計測器,集中度およびストレス度解析装置は既に申請者が提案し,評価検証済みの装置を用いる.(特許出願済) 手元作業の視線を無理なく追跡できるように,26年度に開発予定の分解能が高い視線追跡を手元の作業検出用に改良し,実際の執務環境や学習環境において,脳波から得られる集中度,ストレス度と視線の動きの相関によって得られる情報から興味・関心がある時,集中時,ストレス時の視線の動きの特徴を検出する予定である. さらに実験によって得られた結果の信頼性を検証するために,実際の環境で知的生産性について50名について実験を行う予定あである。また,人のサーかディアンリズムと執務内の知的生産性についての相関なども検討し,知的作業に最適な環境の定義確率を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入を行った結果、価格に変動があり、安くなっていたため。
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次年度使用額の使用計画 |
残金297,671円は今年度の分と合わせて使用する。
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