研究課題/領域番号 |
26330238
|
研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
根路銘 もえ子 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (60369197)
|
研究分担者 |
赤嶺 有平 琉球大学, 工学部, 助教 (00433095)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 拡張現実 / 観光情報案内システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,史跡等の屋外展示物においてリアルタイム画像認識技術を用いてモバイル機器のカメラで撮影した映像の被写体に説明を重畳表示する(一般に拡張現実とよばれる)技術の開発である.提案手法を用いることで,利用者は説明対象と視覚により直感的に把握できるため,解説の本質的な内容に集中することができる.屋外では,GPSによる位置情報が容易に利用できる反面,照明環境の変化が比較的大きく,それに伴い照度変化だけでなく,対象物の「見え」が変化するため従来の局所特徴量を用いた手法では,検出精度が十分ではなかった.本研究では,照明方向の影響を比較的受けにくい「色情報」を用いてより高精度な物体検出の実現を目指している. 局所特徴量は,ノイズやブラー(ブレ)に影響を受けやすく,特にモバイル端末に搭載されたカメラは光学性能が低いため影響が大きく現れる傾向がある.そこで,2015年度は,統計的な二つのアプローチにより対象物体の画像上の位置を推定する手法を提案した.一つ目のアプローチは,特徴点の相対位置に基づき対象物の中心を算出し,複数の特徴点から得られる中心点候補を用いて統計的に位置を推定する方法である.同様の手法が,交通標識を対象とした認識手法として提案されており,本手法は中心点の算出方法を変更することで推定精度の向上を図った.二つ目は,色領域の空間的な分布に基づき高速に対象物の位置を検出する手法(SHOCOL)である.本手法は,検出対象物体の色の(2次元画像における)空間分布をピクセル単位のヒストグラムとして学習しておき,ピクセル単位のバックプロジェクションの総和を用いて物体の存在位置を推定する.単純な色ヒストグラムのバックプロジェクションと異なり,色の空間的な分布も評価されるため高精度な位置推定が可能であり,アルゴリズムが単純なため計算時間が短い.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は複数アプローチによる特定物体検出手法の開発を行い,様々なシーン,対象物に対して評価実験を行った.その結果,屋外の多くの場所において,SHOCOL(今年度提案した色の空間分布を用いた手法)を用いることで安定的に物体の位置検出が行えることが示された.さらに,SHOCOLによる物体位置検出に基づき特徴点の絞り込みを行うことで,より広範囲の特徴点のマッチング精度を向上することができ,実験対象のシーンにおいては,カメラの3次元位置推定精度が向上することが示された.
|
今後の研究の推進方策 |
2016年度は,これまでの開発技術を用いて観光案内システムの実装を行う.モバイル端末において実装する場合,機種により内蔵カメラの光学性能が大きくことなるため,性能が低いデバイスを想定して実験を行う必要がある.例えば,意図的に画質を劣化させた映像を用いた実験などを想定している. 2015年度に3次元位置推定精度の向上可能性を確認したが,より多くのシーンにおいて検証実験を行う必要がある.特に,本研究では屋外史跡における情報提示を目的としているため,城跡等の遺跡を対象とした実験を重視することを検討している.沖縄県においては,城跡が重要な観光資源となっており多くの観光客が訪れている反面,案内や説明が不十分と思われるためリピート率向上のためにも,AR等情報機器を活用した付加コンテンツの開発は地域振興の点で意義がある. 提案システムは,検出された物体に対する説明を重畳表示することを想定しているが,カメラの姿勢変化に伴い付加情報が移動してしまうと,視認性が著しく悪化する.そこで,対象物と付加情報の関連を明確に提示しつつ,視認性の高い情報表示を行うため情報表示のレイアウトを工夫する必要がある.画像内の対象物の位置(画像中心からの距離など)や情報提示開始時点からの経過時間等に基づき重要度を算出し,情報の提示位置を入れ替える等のアルゴリズムを検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定PCをデスクトップパソコンから屋外での実験も可能なタブレット型へ変更したため,購入価格が安くなったため.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度に論文投稿を予定していることから,研究論文投稿料に充てる予定である.
|