現在、日本国内には100万人以上のロービジョン者(全盲ではないが、日常生活に支障のある視力障害者。以下、LV者)がおり、ロービジョンとなる原因が加齢性疾患である場合もあることから、今後ますますLV者の増加が懸念されている。このようなLV者の視覚的支援を行う補助具として、これまで遮光めがねや読書器などが用いられてきた。しかし、これらは主に静止した状態での利用を前提としている。 我々の先行研究において、歩行時の視覚機能の補助具としてのゴーグル型のLV者用ウェアラブルディスプレイを提案してきた。本ディスプレイはディスプレイに取り付けたカメラから前方視界を取得し、これをLV者にとって見えやすいといわれる、画像のコントラスト強化と明るさの改善処理を行う画像処理を行ってディスプレイに表示する機能をもつ。そして、LV者の前方障害物との接触事故の防止のための、ゴーグルの左右端に取り付けたLED照明を投光し、これを撮像して前方障害物との距離検出する手法についても検討してきた。 本研究では、光学系を軽量・小型化できるとされるホログラフィック光学素子に着目し、LV者に提示する前方視界画像を得るためのホログラフィック光学素子及び障害物検出用画像を得るためのホログラフィック光学素子をそれぞれ異なる波長域で作製し、これらを集積して用いるホログラフィック光学素子のロービジョン者用ディスプレイとしての応用の可能性について検討を行った。その結果、この集積型素子を撮像系に用いて得られた前方視界画像と障害物検出用画像は同じカメラの配置でも独立した像が得られることがわかった。
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