研究課題/領域番号 |
26330245
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
寺井 あすか 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (70422540)
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研究分担者 |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70195444)
地村 弘二 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (80431766)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 比喩解釈 / 創造的思考 / 眼球運動 / fMRI |
研究実績の概要 |
本研究では、「AはBだ」という形式で表現される名詞が名詞を喩える比喩文の解釈生成において、文章に含まれる単語(「A:喩えられる語」、「B:喩える語」)に由来しない特徴が文章の解釈として創発する現象(特徴創発)の神経ネットワーク・認知メカニズムを明らかにすることを目的としている。既に、比喩理解過程における意味的な相互作用に基づく意味の探索を行う過程が必要であることが示されている(Terai&Goldstone 2011,2012).そこで、「AはBだ」という形式の文章を実験参加者に提示し、自由に解釈を生成させる課題(解釈生成課題)を用い、創造的解釈生成プロセスを検討した. 実験では、「AはBだ」という形式で表現される文章(字義通り文、慣習的比喩文、新奇比喩文)を提示し、実験参加者に自由に口頭で文章の解釈を回答させる課題(解釈生成課題)と回答された解釈が創造的か否かを評定する評定課題を用いた。まず、解釈生成課題遂行中の視線計測を行う実験を実施した。その結果、新奇比喩文において、非創造的解釈と比較し、創造的解釈生成過程では、「A:喩えられる語」、「B:喩える語」に対する注視時間が長く、特に解釈を発話する11~8秒前において「A:喩えられる語」に対する注視が増加していることが明らかとなった。 次に、特徴創発の神経ネットワークの解明を目的として、解釈生成課題遂行中の脳活動をfMRIを用いて測定する実験を実施した。その結果、非創造的解釈と比較し、創造的解釈生成過程では、腹側内側前頭前皮質を含む右半球の広範な領域において、8秒前~発話オンセットにかけて急激に賦活が強くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に計画していた実験である、比喩文における創造的解釈の生成過程におけるアテンションの変遷に関する解明を、解釈生成過程の視線計測を行う実験を実施することで明らかにした。さらに、解釈生成過程の神経ネットワークの解明を目的としたfMRI実験の一部を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
解釈生成過程の神経ネットワークの解明を目的としたfMRI実験をさらに実施するとともに、得られたデータの解析を行うことで、創造的な解釈生成過程における神経基盤の時間動態を明らかにしたいと考えている。 また、得られた研究成果を日本認知科学会第32回大会(千葉県・千葉大学)にて発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
fMRI利用料として、所属機関のfMRIの利用を想定し、4000円/1時間として見積もりを行っていたが、当初予定していた機関のMRI装置とは異なる機関の装置を利用したため、利用料金が削減された。
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次年度使用額の使用計画 |
現在利用しているMRI装置の利用料金が改訂されたこと、また、異なる機関のMRI装置を利用する可能性もあることから、今年度実施予定のMRI実験における、MRI利用料金としたいと考えている。また、MRIにより取得されたデータの解析をより効率的に行うために、ワークステーションの購入を検討している。
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