本研究では3年の研究期間を四期に分け,質的時系列に位置情報を加えた「プロセス-動態データマイニング法」の開発に取り組んでいる。第三期(平成27年10月~平成28年9月)から第四期(平成28年10月~平成29年3月)にあたる本年度は,前年度に考案した,外来診療プロセスから診療所要時間を予測する診療プロセスマイニング手法(2016年6月人工知能学会全国大会及び同12月ICDM Workshop on Data Mining for Servicesにて発表)を拡張し,状態の継続期間や間隔を明示的に組み込んだ新たな診療プロセスマイニング法を考案した。提案法は,before,co-occur withの2種類の状態関係を,分,時間,日,週など抽象化された期間を伴う期間付き状態関係へと拡張することで,処置や注射の実施に要する時間,他のプロセスとの間隔の長短などを含んだ進展パターンの記述を可能とするものである。慢性関節リウマチの外来診療データを対象とした実験では,[MMP3]=H→(数ヶ月)→[フォリアミン錠5mg]=ON→(数ヶ月)→[好中球数]=Lなど,期間に関する情報がパターンに組み込まれ,従来法と比べてより詳しい関係性を表現できることが示された。また,関係の種類の増加に伴い候補パターンの組み合わせが増大し,特に低次のパターンの照合回数が大きく増加する一方,高次のパターンではサブパターンの支持度が低下し頻出パターンの数が減少することなどから全体の照合回数の増加は比較的抑制されていることが明らかとなった。これらの結果について,2017年5月開催予定の人工知能学会全国大会において発表予定である。
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