研究課題/領域番号 |
26330255
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高野 茂 九州大学, 共進化社会システム創成拠点, 准教授 (70336064)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチセンシングデータ解析 / サイバーフィジカルシステム / プライバシー制御 / ウェーブレット変換 / スマートセンサ情報システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多種多様なセンサから取得される膨大な信号データを高速に解析するために、それぞれの特性に適応するリフティングウェーブレットフィルタの設計手法を提案し、さらに、 プライバシーを考慮するマルチセンシングデータ解析システムの開発することである。 本年度は、講義中の受講者の状態を把握するためのバイタルセンシングデータ解析環境を整備し、マルチセンサにより収集したヒトのバイタル信号による集中度の推定に関する研究を行った。バイタルセンサとして、簡易脳波計、心拍計、カメラ、3次元スキャナを用いて、講義中のヒトの状態、集中・非集中を推定する実験を行った。特に脳波計を用いた実験では、脳波を周波数解析した8帯域のスペクトル信号から、ウェーブレット変換の低周波成分に相当する特徴を複数抽出する手法を提案し、どのような局所特徴を抽出すると、集中・非集中の識別率が向上するかの予備実験を行った。実験結果から、リフティングダイアディックウェーブレット変換による低周波成分の抽出が有効であるという知見を得た。また、3次元スキャナを用いた人物の行動認識の一つとして、居眠りを検出するシステムを構築し、予備実験を行った。さらに、複数の移動モバイルロボットによるヒトの見守りに関する研究開発を進めた。これらの研究成果は国内外の学会において発表を行った。今後は、2次元画像および3次元モデルの特徴を抽出することのできる「リフティング複素ウェーブレット変換」を導入し、環境に適応する物体認識・識別を実施できるアルゴリズムを考案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マルチセンシングデータ解析環境の整備に注力し、特にバイタルセンシングシステムの構築を行った。今後は、より広範囲のヒトの動きを抽出するためのカメラや、室内の温湿度や消費電力量などの環境センサの整備に取り組み、ヒトのプライバシーをコントロールする室内CPS空間の構築を進める。 本システムでは、リアルタイムに収集される生データを保存するのではなく、リフティングウェーブレット変換後の分解成分を圧縮して蓄積する。これにより、ビッグデータの分析に有用な局所特徴、すなわち、環境センサ群により得られる 1 次元信号の高周波成分の大きな点や、マルチメディアデータから得られる特徴点などの蓄積データのみを取り出して、分解時に用いたリフティングパラメータを適用することで、元のデータを高速に復元しビッグデータアプリケーションにおいて深い分析に利活用することができる。 本年度は、1次元信号データに関する特徴抽出において、リフティングダイアディックウェーブレット変換における低周波成分が有効であるとの知見を得た。今後は、2次元画像および3次元モデルの特徴を抽出することのできる「リフティング複素ウェーブレット変換」を導入し、環境に適応する物体認識・識別を実施できるアルゴリズムを考案する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、多種多様なセンサを取り付けたマルチセンシング空間において取得されるデータ群に含まれる個人のプライバシーに関わる情報を、特徴抽出時に調整することのできるセンシング技術を考案する。まず、センシングデータが含む個人のプライバシーに関する情報量モデルとして「プライバシーレベル」を導入する。提案手法では、リフティングウェーブレットフィルタ に含まれる解析用のパラメータに対して、プライバシーレベルに応じたパラメータを重畳的に組 み合わせて、新しいパラメータ「鍵付きリフティングウェーブレット解析パラメータ」を導出する。各プライバシーレベルに応じた「鍵」パラメータを用いて、ビッグデータアプリケーションに「活用」したい特徴的なデータのみを解錠して、ユーザがシステムに提供したプライバシーレベルに応じたサービスの提供を実施する「プライバシーレベルコントロール型 CPS」を構築する。 これらの研究成果は国内外の学会において発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究開発環境の構築に注力したために、 計画していた研究成果発表を次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度得られた研究成果を、次年度に開催される国内外の学会等で発表するための旅費に使用する。
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