本年度は、深層学習のアプローチによるセンサーデータの特徴抽出に関する研究を推進した。特に、リフティング複素ウェーブレットに基づくコンパクトな新しい深層学習モデルを提案した。提案手法では、既存の深層学習モデルであるCNNをベースに、特徴抽出層をリフティング複素ウェーブレット変換に置き換える。通常、深層学習モデルでは、低層において特徴抽出、高層においては認識、判別、識別などを行う層になっている。提案手法では、低層においてリフティング複素ウェーブレット変換を効率よく実施するユニットを実装し、識別層に入力するための画像特徴を抽出するモデルを実現している。また、リフティング複素ウェーブレットフィルタのもつ調整可能なパラメータをニューラルネットワークの重みで表現することで、画像の識別精度を向上させるウェーブレット変換を設計することにもなる。また、提案手法では、学習されたリフティング複素ウェーブレットフィルタを初期値としてセットすることで、学習時間を短縮することができる。また、学習するデータやアプリケーションの領域ごとに学習された初期フィルタを準備することで、学習効率を上げることができる。実験では、画像識別の精度を落とさずに深層学習モデルのパラメータ数を削減できることを示した。 さらに、マルチセンシングデータ解析システムにおいて、3次元形状の識別などの応用システムを開発するために、複数の方向から同時に撮影された物体の2次元画像および距離画像の集合から、3次元形状モデルを生成するシステムを開発した。これらの研究成果は国内外の学会において発表を行った。
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