研究課題/領域番号 |
26330260
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
菅原 研次 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (00137853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒューマンエージェントインタラクション / エージェント動作基盤 |
研究実績の概要 |
本研究申請では、利用者の行動をセンサ群を用いてエージェントが観察することにより、利用者の要求を理解し、様々な知識を利用者と共有することによりその利用者の行動を継続的に支援する共生エージェントの開発を行うことを目的としている.平成26年度は、利用者の情報の生成や利用を自律的に支援する共生エージェントの定式化を行うことを主要な目的とした. まず、共生エージェントの概念を、特定の利用者に対して専属的なサービスを行うことを存在目標とする永続的エージェントであり、利用者の日常活動を支援するために、様々なセンサを使って利用者活動を見守るエージェントプログラムとして定義した.利用者は、利用者の情報や要求を、対話などを利用して積極的に共生エージェントに伝え、共生エージェントの知識の増大を支援することが前提となる.この結果、利用者と共生エージェントのユビキタス環境における協働能力は高まり、利用者の日常活動は共生エージェントにより強く支援される.このために必要な機能として、共生エージェントの認知機能要素群と中核的機能要素群に分けて定式化を行った.認知機能要素群は、多数のセンサとの接続機能、それらの信号から利用者の行動を取得する知覚機能、記号として知覚された利用者の動作を日常における行動として認識する機能などから構成される.中核的機能要素群は、認知機能要素群から取得された記号として構成された行動オントロジーから利用者行動を理解して利用者の意図を推論する機能、利用者との対話機能、対話により利用者モデルを生成する機能などから構成される.これらの機能が統合して動作するためのマルチエージェントシステム動作環境の実験的な試作を行い、基礎的な動作実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、共生エージェントの概念を明確化したうえで、その概念にしたがって(1)共生エージェントのアーキテクチャの設計、(2)共生エージェントの中核機能要素群の設計、(3)共生エージェントの認知機能の要素群のエージェント化機能の設計を行うことを目標とした.まず、共生エージェントの概念は[研究実績の概要]で述べた通りであり、本研究計画では、一貫してこの概念に基づいた共生エージェントとその動作基盤を開発する.まず、(1)の共生エージェントのアーキテクチャを、認知機能要素群と中核的機能要素群に分割し、それを一つのマルチエージェントシステムである共生エージェントして接続するための接続機能により構成する (2)の共生エージェントの中核機能として、利用者に関する行動モデルやタスクモデルを蓄積するための知識ベースや、対話による利用者特性の獲得などを行う自然言語対話機能、利用者行動と処理タスクとの関連を推論する機能の設計と試作を行った.これらの中核的機能群は、既存のOMASエージェントプラットフォームを利用し、設計と試作を行った.この成果については、国際会議(ICCICC 2014)で発表を行った. (3)の共生エージェントの認知機能要素群は、中核的機能要素群のエージェントと協調させるために、エージェントとして動作すること(エージェント化)が必要である.このため、マイクロフォン、深度センサーなどのセンサー群を認知機能要素エージェントとして動作させるエージェント化機能の設計と試作を行った.これにより、認知機能エージェント群と中核的機能エージェント群が一つのマルチエージェントシステムとして動作する共生エージェントの動作環境が実現する.この成果は、情報処理学会論文誌(第56巻1号)に発表した.以上により、平成26年度の目標は順調に達成された.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に設計した共生エージェントのアーキテクチャに基づいて、平成27年度は、共生エージェントを動作させるためのエージェントのプラットフォームの開発を行う予定である.共生エージェントの中核機能エージェントと、センサーやデバイスを制御する認知機能エージェントの動作環境は試作を終了しているので、平成27年度は、これらを結合させてマルチエージェントシステムとして永続的に動作させるための共生エージェントプラットフォームを開発することを目標にする.さらに、共生エージェントの開発支援環境を提供する.認知機能群はセンサやアクチュエータなどの装置を制御し、信号処理や知覚処理などの高速アルゴリズムを中心としたプログラム群であるため、ハードウェアミドルウェアと親和性の高い開発環境で開発し、中核的機能要素群は、知識ベースや記号論理の人工知能由来の記号処理と親和性の高い環境で開発する.このように、二つの動作環境に対応した開発環境を提供することにより、それぞれの機能要素群に対するこれまでの開発経験やライブラリを再利用できると考えており、共生エージェントの開発効率が向上することが期待できる. さらに、提案した共生エージェントの実験検証システムとして、国際間の遠隔会議の参加者をそれぞれの共生エージェントが支援する遠隔ブレーンストーミング支援システムを平成28年度に開発する.本システムはフランス・コンピエーニュ工科大学の研究協力者と協働して開発および実証実験を行う予定である.現在、その準備として遠隔ブレーンストーミングの概念、共生エージェントによる支援機能、モデルの策定を行い、国際会議(OTM 2014,ICAST2014,CSCWD 2014)において、モデルの提案を行っている.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した消耗品の値段が当初予定した価格よりも低額であったことによる差額が、次年度使用額として発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、研究計画に必要なメモリなどの消耗品の購入に使用する予定である.
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