本研究では,クラウドの中に永続的に存在するエージェントが,利用者の周囲に存在するセンサー群からの信号を受け取ることにより,利用者の行動や状況を観察し,この観察に基づいて,利用者の要求や状況を推定し,利用者の現実空間やインターネット空間での利用者の行動を支援するエージェントシステムを開発することを目的とする. エージェントは,知覚機能,意思決定機能,動作機能の三つの要素から構成される.知覚機能は,センサーからの信号を取得するエッジネットワークの中に構成され.知覚した結果を抽象データとしてクラウドの中で動作する意思決定機能に送信される.クラウドには,意思決定を支える物理空間の知識,社会知識,利用者に関する知識などの知識ベースがエージェント要素として蓄積されている.意思決定(利用者支援)の結果は,アクチュエータを制御するコネクタを動的に選択して,それにメッセージを送信することにより,必要な支援を利用者に対して行う. すなわち,本研究では,共生エージェントは,IoTプラットフォーム上の異種マルチエージェントシステムとして設計され,インターネットを通してM2Mプロトコルを利用して協調する大規模マルチエージェントシステムとして実装された. 実験システムとしては,インターネットを利用した遠隔地での協働作業支援環境を作成し,この上で利用者および互いに協調する共生エージェントを実験的に実装し,千葉工業大学と仏国コンピエニュー工科大学の共同研究者との間で,利用実験を行い,当初の会議支援機能の有効性を検証した.会議の状況は多数のカメラで撮影され,利用者の要求に応じて動的にカメラディスプレーが選択された.マルチタッチディスプレー上に書き込み・表示されたノートデータは利用者の音声による指示に従って,整理・記録され,利用者とエージェントの協調作業が実現された.
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