研究課題/領域番号 |
26330281
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
本多 克宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80332964)
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研究分担者 |
野津 亮 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40405345)
生方 誠希 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10755698)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共クラスタリング / ファジィクラスタリング / 意思決定支援 / 文書解析 / Webデータ解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,大規模な共起関係データに対する共クラスタリングによる情報縮約を通して,文書データやwebデータの効率的な解析技術を確立し,ヒトに優しい知的情報処理技術を実現することを目的としている.第2年度は理論的および応用的側面からの展開として,以下の成果を上げた. 1.初年度に確認された確率モデルに基づく共クラスタリングのファジィ化の効果を高める理論的展開として,決定論的枠組みによるファジィ度パラメータのアニーリングにより,初期値依存性の軽減効果を確認した.また,潜在的な分割ファジィネスを含むモデルと解される確率的潜在意味解析からの展開を通して,分割の信頼性を高めるアプローチを見出した.これらの成果について,2件の学術論文発表,1件の国際会議発表および2件の国内学会発表を行った. 2.実世界の大規模なデータを分析する際には,付随的な参考情報が活用できる場面も多い.応用展開における利便性を向上させるべく,部分的なクラス情報が利用できる場面や,一部の変量の特殊性が顕著な場面での有効性を向上させるアルゴリズムの拡張を行った.IT関連企業からの協力を得て実施したTwitterデータを用いた実証実験により,効果を確認した.これらの成果について,1件の学術論文発表,4件の国際会議発表および3件の国内学会発表を行った. 3.個人情報を含む実データへの応用展開を図る工夫として,プライバシー保護データ解析への活用を進めた.クラスタリングによるデータの群化を顔画像の匿名化に応用し,群集行動の分析への応用可能性を示した.また,個人情報の匿名化を考慮した分散データベースの活用を促進するべく,匿名化後のデータの信頼性を反映した精度向上を確認した.これらの成果について,2件の学術論文発表,3件の国際会議発表および4件の国内学会発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理論的および応用的側面からの展開をはかった第2年度としては,当初の研究の目的を十分に達成する成果を得た.以下に,個別の課題における達成状況を述べる. 1.確率モデルに基づく共クラスタリングからの理論的展開においては,従来の確率モデルの持つ初期値依存性を大幅に改善するアニーリングアプローチの効果を確認し,初期値依存性と共クラスター明確性の両面で確率モデルを凌駕するファジィ共クラスタリングアルゴリズムを構築できた.確率モデルの単なる代替法ではなく,独自の機能を有する分析モデルの開発を実現しており,想定を超える成果が得られた. 2.半教師情報の活用モデルの開発においては,ベンチマークデータにおける有用性の検証にとどまらず,実世界のTwitterデータでの検証にも成功しており,実応用への展開をはかる基盤が構築できた点で,当初に想定した目標を完全に達成するものであった. 3.その他の応用展開としては,当初に想定した「協調フィルタリングシステム」への実用展開については,当初の共同研究機関との協働が不調に終わっているものの,当初の計画を越えて,近年,重要性を増しているプライバシー保護群集行動解析への展開を実現しており,目標とするレベルに達した成果が得られたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の想定通り,第3年度(最終年度)は,応用的側面を重視しつつ,それらを支援する理論的側面の強化についても展開をはかる.実応用展開を志向した実証モデルとしては,当初,共同研究機関からの購買履歴データの活用を予定していたが,新たな共同研究機関から製品の使用感に関する感性的・身体的評価データを供与いただく準備が整ったため,製品の使用感に対する忠告システムとしての実用展開を模索する.協調フィルタリングが「好みの推薦」であるのに対して,製品使用に対する「不適合の忠告」という逆転の展開であるが,開発してきたユーザ・アイテムの群化モデルはいずれにも適用可能であり,想定を超えた新たな実用展開が期待できる. 一方,理論的側面についても,当初に想定した混合多項分布を凌ぐ効果が近年顕著な確率的潜在意味解析からの展開により,想定を超えた有用性が見いだされつつあり,申請時の目標を大きく超える成果が期待できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度内にすでに掲載が決定していた雑誌論文について,特集号の他の査読日程の遅れにより平成28年度に掲載される見込みとなったため.また,当初の共同研究機関との計画がとん挫し,新たな機関との協働を平成28年度に実施するように変更したため,機器の購入計画を後ろ倒ししたため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に掲載される雑誌論文の掲載料として使用する.また,新規の実応用展開に適した機器購入に使用する.
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