研究課題/領域番号 |
26330283
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
米山 淳 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30283344)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ファジィシステム / 非線形システム / 制御系設計 |
研究実績の概要 |
これまでの研究において、従来のスタンダードな高木・菅野ファジィシステムを拡張し、より広いクラスの非線形システムを表現できる一般化ファジィシステムを提案した。また、その一般化ファジィシステムにより局所的なサブシステムの数も少なくできることを示した。これにより、広いクラスの非線形システムを表現でき、さらにその制御系設計のための設計条件も少なくできることを示した。さらに、新たな制御器として、従来の並列分散制御器(PDC)を拡張したnon-PDC型の制御器を用いた。また、制御器の重み関数として、メンバーシップ関数の積分を用いた。これにより、制御系設計のための設計条件においてはメンバーシップ関数の微分可能性を仮定する必要がなくなった。一般的に、メンバーシップ関数が微分可能とは限らず、多くの場合にメンバーシップ関数として用いられている三角型の関数は微分不可能である。したがって、この制御器により、従来の制御器では不可能であった非線形システムの制御系設計が可能となった。対象システムはシステムパラメータに不確かさを含むシステムとし、アクチュエータの誤動作も考慮したロバスト制御系の設計を行った。さらに、対象システムを、主に大規模ネットワークシステムの制御を念頭に置いて、むだ時間を含む非線形システムに拡張した。ネットワークシステムではセンサーとアクチュエータに遅れが生じる。このような非線形むだ時間システムに対しても、対象のネットワークシステムをファジィむだ時間システムで表現し、上述同様の新たな制御器を提案した。これにより、理論的には制御系設計条件を大幅に緩和することが可能となった。これらの理論的な制御系設計手法の有効性を確認するために、数値的なシミュレーションを行った。既存の結果と比較して。より広いクラスの非線形システムに対する制御系設計が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた出力フィードバック則による制御系設計はほぼ終了した。制御器も静的制御器のみならず動的制御器を用いた制御系設計を行った。これまでに行っていた制御系設計には主に静的制御器を用いていたが、静的制御器では制御可能なシステムのクラスが限定されることが知られている。しかし、動的制御器ではより広いクラスのシステムの制御が可能であり、制御性能を高めることができた。なお、制御系設計条件は非線形行列不等式で与えられるが、これを効率的に解くためにBMI解法アルゴリズムを用いた。また、動的出力フィードバック則による確率的な外乱が混入する場合の確率制御系の設計も行った。さらに、制御器の重み関数に、メンバーシップ関数の積分を用いた。これにより、制御系設計条件を緩和することができた。この制御器を通常のファジィシステムのみならず、ファジィむだ時間システムの制御系設計に応用した。システムのむだ時間分だけ、メンバーシップ関数を時間積分した重みを制御器に用いることにより、制御系設計条件を適切に導出することができた。一方、計画していたフィルタの設計に関してはまだ確立していない部分がある。ただ、フィルタの重み関数にも制御器同様な重み関数を用いることで設計できることが予想される。また、研究計画にあるサンプル値制御系の設計はまだ行っていないが、サンプル値システムがむだ時間システムに書き換えられることを考えるとむだ時間システムの制御系設計を応用して、サンプル値システムの制御系設計もできると予想される。これらのことを総合的に考えると、これまでに計画していた研究内容はほぼ順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでやり残している研究内容を行うとともに、今年度計画している研究内容にも取り組んでいく予定である。まず、フィルタの設計を考察する。制御系設計と同様、ファジィシステムの前件部変数が既知の場合と未知の場合とに場合分けし、それぞれの場合のフィルタの設計を行う。フィルタゲインの重み関数に、メンバーシップ関数の積分器を取り入れた新たなフィルタを導出する。これにより、フィルタ設計条件の緩和とファジィシステムのメンバーシップ関数が微分可能なものでないファジィシステムにも対応できることになり、より広いクラスの非線形システムに対する設計が行えることになる。また、当初からの予定である、ファジィサンプル値システムに対する制御系設計を行う。ファジィサンプル値システムに対する制御系設計はすでに行われているが、それを一般化ファジィむだ時間システムに拡張する。また、設計手法においては、ファジィサンプル値システムがファジィむだ時間システムに書き換えられるため、ファジィむだ時間システムの制御系設計手法を応用することでファジィサンプル値システムの制御系設計手法とすることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を国際会議で発表する計画をしていたが、国際会議で採択されない論文があった。それらの研究を国内学会で発表したが、発表予定していた国際会議への旅費や参加費と参加した国内学会のそれらの差異が余剰となってしまった。また、フランスの大学の研究者と共同研究も検討していたが、参加した国際会議にて打ち合わせを行ったため、調査出張旅費を計画していたが、調査出張をしなくてもいい状況となった。さらに、数値シミュレーションのためのプログラム作成も独自で行ったため、経費を使用するがなくなった。これらが、主に使用額に差異が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、主に研究成果の発表のため、国際会議や国内学会での発表、さらに学術誌への投稿を行うつもりである。当初から今年度に予定している国際会議や国内学会に加えて、その他の国際会議や国内学会にも研究成果の発表を検討している。これは、隔年開催または3年ごとに開催される国際会議が今年度に開催されるため、それらの学会での発表を考えている。また、研究内容に関係する書籍・資料の購入や参加予定にない学会の予稿集も購入して最新の結果を手に入れる予定のため、これらの費用とするつもりである。それに加えて、数値シミュレーションのためのプログラム作成や、実システムのへの適用を考えて実験装置の準備にも経費がかかると思われるため、その費用とする予定である。
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