研究課題/領域番号 |
26330284
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
小川 毅彦 拓殖大学, 工学部, 教授 (50297090)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / 高次元数 / 四元数 / 複素数 / 逆問題 / 3次元空間 / 不良設定性 / 正則化 |
研究実績の概要 |
本研究は,高次元ニューラルネットによる逆問題解法について,不良設定性に関する問題の解決を含めた枠組を構築し,さらに実際の工学的問題への展開によって有効性を実証することを目的としている.本年度は,四元数に拡張したネットワークインバージョン法の基礎的研究及び応用研究を中心に取り組んだ. まず,四元数に拡張したネットワークインバージョン法を対象に,基本的な例題として3次元空間における写像逆推定問題と2自由度ロボットアームを対象にして,計算機シミュレーションによって通常のネットワークとの比較を行い,四元数ネットワークインバージョンの有効性を確認した.その結果を論文投稿し採録された. 続いて,四元数ニューラルネットの工学的問題への応用として,本年度は多自由度ロボットアーム逆運動学問題解法を対象に検討を行った.その計算機シミュレーションによる結果を学会の研究会と全国大会で発表した.また,将来的な高次元ニューラルネットの応用の可能性を探るために,言語処理分野の問題の検討を行った. さらに,上記の内容を含めて高次元ニューラルネットに関するこれまでの研究成果や研究動向,および今後の応用の可能性を含めて,学会の招待講演で紹介した.以上のように,本年度は高次元ネットワークインバージョン法の基礎的研究と応用研究に取り組み,学会発表を中心に実績を示した.次年度以降はさらなる問題への適用のための検討および計算機シミュレーションを進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高次元ニューラルネットによる逆問題解法に関して,四元数ネットワークインバージョン法による写像逆推定問題を用いて計算機シミュレーションを行い,有効性を示した論文を投稿し採録された.本論文ではまず,四元数ネットワークインバージョン法の処理について数式を用いて説明した.続いてその動作を示すために3次元空間における逆写像問題と2自由度ロボットアーム逆運動学問題を取り上げ,計算機実験によって通常の実数型ニューラルネットの場合との比較を行い,有効性を明らかにした. また,高次元ニューラルネットの工学的問題への応用として,多自由度ロボットアーム逆運動学問題への取り組みを学会の研究会や全国大会等で発表した.ここでは,3次元空間内で動作する3自由度ロボットアームの構成を考え,計算機実験によって動作を示した.この取り組みについては,今後内容を精査・再検討して成果が上がり次第論文投稿を行っていく予定である.さらに,応用研究の展開として言語処理や生体計測,コンピュータグラフィックスへの幅広い分野への応用に取り組んでおり,現在データの計測実験および計算機シミュレーションを進めている.今後成果が得られ次第発表を行って行く予定である. 以上より,高次元ニューラルネットに関する基礎的研究および応用研究の進捗状況については概ね順調に進展しているものと捉えており,さらに研究を進めていく所存である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では,高次元ニューラルネットに関する基礎的研究とその応用研究の2つの部分に分けて研究を進めている. 基礎的研究としては,現在行っている四元数ネットワークインバージョン法における不良設定性による問題の解決のための方法を,理論また計算機実験によって定量的に検討して本手法の有効性を明らかにする.これまでのところ,不良設定性の影響を受けない場合の本手法の有効性を確認しており,今後は不良設定性の影響について定量的に検証するとともに適用限界を明らかにする方針である.基礎的な検討については,成果が得られ次第論文投稿を行う予定である. 応用研究としては,四元数ニューラルネットを言語処理や生体計測,コンピュータグラフィックスなど幅広い応用を検討し,計算機実験や実証実験で有効性を検証していく.本手法は多次元データに対する非線形変換の学習法であるので,幅広い応用分野が考えられる.今後はこれまでに検討してきた応用問題について検討を深めていくのと同時に,新しい応用分野の開拓を行って行くことで,本手法の有効性を明らかにしていく方針である.応用問題に関しても,成果が得られ次第研究発表を行っていく予定である. 以上の通り,本研究課題では高次元ニューラルネットに関する基礎的研究およびその応用研究として,それぞれの部分でさらに研究を進めていく所存である.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請額と実支出額との差異が生じている主な部分は,旅費と人件費・謝金の部分である. 旅費については,申請段階では海外で開催される国際会議での発表を計画していたが,本年度は国内学会を中心に発表を行ったため,予定よりも少ない支出額となった.人件費・謝金については,学生アルバイトを使って実験やデータの整理を計画していたが,作業の予定の調整が難しく,実際にはあまり実施できなかったため,予定よりも少ない支出額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,高次元ニューラルネットに関して幅広い応用研究への取り組みを予定しているため,成果発表のための旅費については昨年度以上に増加する見込みである.また,応用研究については多くのデータ収集とデータ整理が必要になるため,これまであまり支出してこなかった人件費・謝金についても必要になるものと想定している.
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