研究課題/領域番号 |
26330286
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松山 泰男 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60125804)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 類似動画像検索 / エグゼンプラー / フレームシグネチャ / 競合学習 / 数値ラベル / ビッグデータ構造化 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
この研究は、ビッグデータとしての動画像の集団を類似性に基づいて構造化し、コンテンツベースの類似性検索を可能にすることを目的としている。この問題を人手による判定に頼ることは不可能であり、機械学習の方法に基づくことになる。そのとき、機械学習アルゴリズムの美麗さを追求しすぎると実世界の問題への対応能力を犠牲にすることになる。そこで、平成27年度においては動画像のフレームどうしの類似性を測る基本方式としてISOとIECでの共同規格として登場したFrame Signatureを特徴量として用いることにして理論と実問題との整合を図ることにした。そこ結果、次のような研究実績を得ることができている。このことは、次のような4項目として表すことができる。(1)長さの異なる動画像どうしを比較するために、エクゼンプラーとよばれる代表フレームを抽出する必要がある。このとき、Frame Signatureを静止画類似度とし、さらに動画像の時間性を考慮したクラスタリングを行える機械学習アルゴリズムを複数種類作成した。(2)上で記述した時間依存型のクラスタリングアルゴリズムは7種類あり、互いに他の代替物としての類似性の検出において同等の性能を有していることを、実験により得た。(3)上で述べた7種類の時間依存型クラスタリングアルゴリズムをソフトウェアとして実現したとき、システムの軽量性と実行速度においては相当の差異がある。このことについて詳細な実験を行った結果、タイムラインをブロックごとに判断するペアワイズ最隣接法が軽量性と実行速度において優れていると判定できた。(4)動画像どうしの類似性を測る実験において、他人の動画像の輝度、フレームレート、ぼかしなど変形を行った埋め込みがある場合の非合法動画像を意図的に作り上げて検出をおこなったとき、極めて高い性能を得ることができて、剽窃動画像の検出ツールとして有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
この研究計画の開始時に設定しておいた目的は次の様なものであった。それらは、(1)動画像に対する数値ラベルを、代表フレーム(エクゼンプラー)と対応付け可能なコンテンツとして割り当てるための機械学習アルゴリズムを設計すること、(2)その学習アルゴリズムに基づいて数値ラベルを割り当てたビデオ画像どうしを、類似度に基づいて比較する方法を確立すること,(3)数値化された類似度に基づくランキング化を可能にすること,(4)以上のことを一体実現するグラフィカルユーザーインターフェースを作成することであった。これらの諸項目に対して、平成27年度では、特に項目(2)と(3)において進展を得ることができている。 まず、類似度についてであるが、平成26年度で用いていたカラーヒストグラムよりもさらに高精度で実用的な規格であるISO/IECのFrame Signatureと整合させることを可能にした。このFrame Signatureはカラーヒストグラムとは相反して、色彩に頼らずにモノクロのテクスチャー情報を画像中の位置を反映して取り出すもので、機械学習のアルゴリズムに埋め込まれたことはなかった。そこで本研究では画像間でのFrame Signatureの差異を数値化できるようにして、その数量を類似度として利用することによりエクゼンプラーを抽出した。これにより、動画像中に他人の動画像を非合法に埋め込んだ不正動画像を高い精度で検出することができた。そしてこのことは、項目(3)にある数値ランキング化を実現したことになっている。グラフィカルユーザーインターフェースの実現については、平成25年度においてカラーヒストグラム方式で実現しておいたソフトウェアに基づいて、Frame Signature方式での実現を目指しているところである。以上のように、平成26年度までの達成度は、当初計画を上回る速度で実現されている。
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように、ここまでの進展は成果物から見て取れるように知財化を含んでいて当初予想の通りであるが、ここにきて新たな発展的問題が見つかっており、当初目的よりも高いレベルを目指す段階に入っている。それらについては、次のように表すことができる。まず、一般物体認識との連動である。一般物体認識とは、画像中に何かの物体が存在するかどうか、存在するとすればその領域はどの部分なのかを見つけ出すことである。この問題は易しそうに見えるが極めて奥の深い技術を必要とする。人が行う場合であっても100%の正確さを達成することは無理である。これに対して、スーパーコンピュータレベルの機械学習時間を要するとはいえ、深層学習(ディープラーニング)による方法が人の能力を上回るレベルになってきている。この一般物体認識は明らかに類似義動画像検出の問題と関連する。そこで、平成26年度においては、次のような研究方針とすることを考えている。(1)Frame Signatureに基づく類似動画像システムのためのグラフィカルユーザーインターフェースの完成を目指す。(2)Frame Signatureは画像間の類似性を測るための優れた方式であるが、色彩に関する検出を行っていない。そこで、色彩パターンに関する類似性を測る機構を盛り込むことにする。これには二つの方法が考えられる。一つはカラーヒストグラムを測って祖の値をFrame Signatureと組み合わせることであり、もう一つはRGBあるいはHSVの色空間において、成分ごとに三つのFrame Signatureを計算して類似度を出す方式である。どちらを取るのかについて、速やかに予備実験を行うことにする。そして(3)として、一般物体認識と類似動画像検出との連動についての基本形態を導き出すことを行う。これについては、計算コストのかかる通常の深層学習ではなくて、断片的な直線近似を組み合わせた簡便化法を検討することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
この額は,消耗品として購入予定だったトナー(CMYK,1セット)としては残額不足であった.そこで,その分を次年度分と合わせ,一式の購入を予定したため.
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次年度使用額の使用計画 |
カラープリンター用トナー(CMYK, 1セット)として使用する計画としている.
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