研究課題
課題1「制約付エントロピー最大化原理の一般的な確率素子への拡張」に対しては,制約付エントロピー最大化原理をより一般的な確率素子に対して適用できるように,平成26年度に行った理論的枠組みの拡張に対して,コンピュータシミュレーションによる確認を行い,論文の執筆に着手した.課題2「多様な確率発火素子集団による情報伝達」では,まず多様な確率素子が複数あった場合の情報伝達に対して,制約付エントロピー最大化原理に従うことのメリットを調べることを目的として,同原理に従ってスパイクを生成する複数の送信側(プレ)の神経細胞から,スパイク列を受け取る1つの受信側(ポスト)の神経細胞が生成するスパイク列が,同原理に従うときに満たすべき条件を詳細に調べたところ,当初の予想に反して,プレが興奮性の神経細胞集団のみから構成され,ポストが積分発火型確率素子であると仮定した場合,かなり限られた条件下でのみインビボで観測される同原理に従うスパイク時系列が生成されることが判明した.そこで,この予想外の結果を踏まえて,本年度の研究は,昨年記載した推進方策に従って,他の課題に優先して課題2の状況において,どのような条件下でポストの神経細胞が生成するスパイク時系列が同原理に従うのかを詳細に調べた.結果として,プレの神経細胞集団が,興奮性だけでなく抑制性神経細胞から構成され,さらにその発火率が相関して変動することが重要である事がわかった.また,プレの神経細胞とポストの神経細胞の間のパラメータの対応関係を調査した.その他,神経細胞ネットワークの大局的な活動と人間レベルでの判断の不確実性に関して,昨年度に引き続き脳波計測データに基づく考察を行い,さらに広い分野の研究者とエネルギー消費の観点から議論した.
2: おおむね順調に進展している
昨年の報告書で記載した通り,当初の想定に反した結果が出たため,今後の研究を遂行する上で重要な点である「インビボで観測される条件付エントロピー最大化原理を満たすスパイク時系列の統計性を満たす神経系の条件」を調査した.この条件に関しては結果が得られており,今後の研究には支障がなくなった.従って,当初の予定通り,平成28年度は,課題2のまとめと課題3を進め,後半で課題4を行う予定である.
今年度は,研究の遂行上想定外に生じた「インビボで観測される条件付エントロピー最大化原理を満たすスパイク時系列の統計性を満たす神経系の条件」を調査することによって,確率的スパイク生成様式に対する制約条件という副次的な結果を得る事ができた.今後はこれにより得られた知見をもとに,制約付エントロピー最大化原理に従う確率素子の情報伝達効率を実際に計算し,また今回得られたプレとポストのパラメータの対応関係を利用して,課題3である確率分布を用いた新しい演算様式に関して検討する.さらに,後半では課題4で示している実際の神経活動データへの適用を行い,上述の演算がどの程度実現可能かについて検討する.得られた成果に関しては,論文としてまとめ,公表する.
予算申請時に想定された金額よりも実際には安く購入できたため.
次年度の予算と合わせて,当初購入を予定していたより機能の充実した
すべて 2015
すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)