研究課題
本研究課題では,確率素子としての神経細胞の情報処理原理の解明を目指して行ってきた.課題1「制約付きエントロピー最大化原理の一般的な確率素子への拡張」では,限定的な条件を仮定していた先行研究の条件を一般化することを目的として,平成26年度に解析計算や数値シミュレーションを行い,平成27年度に論文の執筆を着手し,最終年度である本年度は引き続き論文の執筆を進めた.また,課題2「多様な確率発火素子集団による情報伝達」では,これまで1素子で考えていた制約付きエントロピー最大化原理仮説を多素子の場合に拡張することを目的として,平成27年度には,受信側の神経細胞が生成するスパイク発火時系列が,制約付きエントロピー最大化原理に従うときの条件を,送信側の神経細胞集団の性質と受信側の神経細胞の性質に関して明らかにした.最終年度ではこれらの内容をまとめ,論文執筆を進めた.さらに最終年度では,神経ネットワークとしての情報変換原理を検討するために,神経細胞のネットワークを構築して,数値シミュレーションによりその発火活動を解析した.素子の性質に加え,双方向結合度や三角モチーフ数などのネットワークの局所的な構造によって,出力時系列の統計的性質が大きく影響を受けることが明らかになった.この結果から,分布を用いた確率素子としての神経細胞の演算原理を考える際には,当初想定していたような入力を演算して結果を出力として出すような単純な構造に加え,ネットワークの強い再帰性の影響をも取り込んだ形で定式化する必要性が示唆された.
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
The Journal of Neuroscience
巻: 36 ページ: 5736-5747
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0230-16.2016