本研究では、大規模カオス(GCM)に基づくサウンド生成システムICASを用いて、マルチ生体情報によるリラクゼーションサウンドを生成することを目的としている。 ユーザのリラックスしている度合いを推定するための指標として、最初に脳波および心拍変動に着目し、リラックス度を定量的に判定することを試みた。 まず1年目には、脳波計により脳波から得たθ波、α波、β波情報からそれぞれのパワー含有率を計算し、このパワー含有率Gと全脳波情報のうちθ波とα波の比率を計算するリラックス度R-脳波を定義した。さらに、心電位からRRI(心拍間隔)情報より、心拍が計測される度にRRIの標準偏差・最大偏差・平均値・偏差自乗平均平方根を算出し、これらの生理指標を入力としてリラックス度R-心拍を出力するファジィ推論ルールを構築した。 これらの脳波と心拍によるリラックス度の評価手法は、おおむね有効であることが初年度に個別に確認されたため、2年目にはこれらの評価手法の比較検討と、大規模カオスによるサウンド生成システムICAS を用いた癒し効果の検証実験を行った。この結果、脳波はユーザの感性評価との相関が高く、心拍に関してもある程度の相関が見られたことから、本提案手法の有効性が確認できた。 さらに3年目の最終年度には、脳波と心拍以外の生体情報として発汗の利用を試み、ファジィ推論を用いてリラックスとストレス状態の検出が可能であることを見出すことができた。今後は、生成サウンドに対する人間の癒し効果を分析するため、初年度に解析した大規模カオスの生成サウンドと1/fゆらぎとの関連性の検証で得られた知見を利用した研究への発展も考えられる。
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