トンネルなどの土木コンクリート構造物のひび割れ形状やひび割れ幅を画像点検するための機器開発が実用に近づいてきた.一方,高架橋や橋梁などの画像検査では,構造形状の複雑さや画像取得の困難さのため,未だに人手によって行われているのがほとんどである.また,遠方からカメラを用いて撮影する手法も検討されているが,撮影時に人が介在するため,完全自動化には至っていない.本研究課題では,高架橋や橋梁などの下から画像検査を実現するための移動ロボットを開発した.開発したロボットは,移動部であるマルチコプタ機構を覆うフレームを持ち,このフレームが平面と接触しながら床版の裏や橋脚を移動することが可能である.また,フレームには車輪を取り付けることで,平面上を通常の移動ロボットが移動するように,壁面上を移動可能である.提案ロボットの有効性を検討するために,ロボットの移動実験を床面と壁面に対して行い,提案ロボットが安定して移動できることを実験を通して検証した.本ロボットは壁面上昇時には壁面に対して常に接触しながら移動可能であることが確認でき,床面上も接触しながら安定して移動が可能であった.これらの実験を通して,提案ロボットの設計及び機構の有効性を確認した. 今後は,機体の改良およびカメラ機構による画像獲得が課題である点と,実現場の橋梁や高架橋において問題である風による外乱が存在する環境下でも安定した移動を実現することが挙げられる.
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