研究課題/領域番号 |
26330299
|
研究機関 | 産業技術大学院大学 |
研究代表者 |
成田 雅彦 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (30513717)
|
研究分担者 |
松日楽 信人 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20393902)
加藤 由花 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70345429)
土屋 陽介 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 助教 (90447037)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | クラウドロボティクス / ロボットサービス / 知能ロボット / ソフトウエアプラットフォーム |
研究実績の概要 |
本研究では,ロボット工学の専門知識を持たないプログラマが容易にロボットサービス開発に参画するためのロボットサービス統合基盤の提供にとりくんでいる.研究は,研究単位1(ベース機能開発)と研究単位2(遠隔ToolKit)を本年度,次年度より研究単位3(統合・実装・評価)と単位を分割して進めている.以下,単位毎に実績を記載する.研究単位1では,(1)RTM/RTCを,我々が提案するサービス統合基盤上で相互運用できることを示した.RTM/RTCの例として,公開されているRTM上のSLAMモジュールを採用し,RSNP/RTM gatewayによりRSNP遠隔操作サービスへ接続し,RSNPとSLAMモジュールとの統合をシミュレーション環境上で実現した.さらに,(2)インターネットを介した音声通信機能をもつロボットシステム構築のための統合技術の基礎部分の試作を完了した.音声通信機能のRSNP への統合は,RSNP の既存のプロトコル上に音声データを載せることで実現し,ここにキューイング機構を導入し,キューアクセス方式を工夫することにより音声の遅れを減少できた.本試作の音声の伝達遅れはIP 電話に相当する.研究単位2は,ロボットの遠隔操作ツールキットの開発である.このツールキットに必要な汎用モジュールとして,ソフトウェアシミュレータ環境との連携によるトレースサービスを提案した.本トレースサービスは,移動ロボットの軌跡表示などの視覚情報を中心として,ロボット移動情報の表示,ロボット操作/実行の履歴を表示する.さらに,シミュレータ機能を使って,衝突,エラー等の回復処理を扱える.研究単位3では,フレームワークの自己拡張構造について,開発ユーザとの議論が開始されており,開発ユーザが定義したプロファイルをロボットサービス統合基盤上でコミュニティのAPIとして広く利用できる体制の検討を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究単位1-(1)RTMとRSNP連携機能を実装し,SLAMや,都技研のT型ロボットに適用し評価を行った.後者は,ベイエリアロボティクスフォーラムでチュートリアルにて,得られた知見の社会への発信を開始した.研究単位1-(2)については,試作を行い,べイエリアロボティクスフォーラムにて,本試作のデモを行い,併設のロボット学会ネットワークを利用したロボットサービス研究専門委員会の研究会で,公開の参加者による音声通信の品質の評価実験を行ない,RSNPに統合された音声通信が会話に十分な品質であることを確認し,一定の評価を得ることができた.この成果は,「RSNP拡張によるロボット制御と音声通信統合のためのロボットサービスプラットフォーム」として,ロボット学会誌Vol.33 No.2へ掲載された.研究単位1(1)の実現のために,Named Pipeを利用した連携技術を開発することで,Java/ C++/ Python等の異なる言語で作られているシステム及び異なるプラットフォームと,サービス統合基盤を容易な連携を実現した.さらに,これを用いて,本プラットフォームの一部として,RSNPとシミュレータ環境を実現した.これは,RSNPコンテスト2014において発表され,日本ロボット学会 ネットワークを利用したロボットサービス研究専門委員会賞を受賞した. 研究単位2については,上で実現したシミュレータ環境を用いて.トレースサービスを試作したが,専門家による評価では,衝突のシュミレーションが可能な点など好評を得られた.研究単位3については,「ロボットサービス統合プラットフォームとしてのRSNPの課題と仕様拡張」として,日本ロボット学会学術講演会2014で,関係ユーザとの議論が開始し,さらに一時試作を完了した. 上記により,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
研究単位1-3の実現の見通しと展開の可能性が見えてきたが,有望な可能性をすべて追求するには人的リソースが不足している.従って,やるべき事を絞り.研究単位1(ベース機能開発)では, 広く利用されるために必要な施策を行い,研究単位2(遠隔),3(機能の階層化,実証)にシフトする。具体的には,以下のように進める: 研究単位1では,1)音声システムのサーバ機能とAPIの公開と,2)ロボット側の機能としてiOSでのブラシュアップと公開と,ディバイスの多様化―linux(raspberry Pi)での動作ーを行い,実用システムに近いレベルを目指すための研究を行う. 研究単位2(遠隔)では,ロボットが無くても検証できる遠隔操作環境の実現を試みる.このために,2014年度に得られたSLAMの連携とトレースサービスの統合し,先行指示をGUIで行うことで,スムーズな操作を実現する.これらは,シミュレータとの連携を通して,実ロボットの無い場合でも容易に検証できるようにする. 研究単位3では (機能の階層化,実証),試作中の階層化機能を用いて,上で述べたAPIの公開のための音声機能のプロファイル(プラットフォームへの組み込み)化及び仕様化,SLAMのプロファイル化,可能であればアームなどの3次元操作のプロファイル等を行い,階層化機能に不可欠な機能群の抽出,実現を試みる.本プラットフォームの実証は,RSIと協力して国際ロボット展や2016年度のイベントで行う予定である.このための準備を合わせて開始する.具体的には,より上位サービスの準備する必要があるが,例えば,ロボットを複数台連携したサービス提供や,これらのロボットを用いたデータ収集と分析を想定している.このための上位サービスを機能の設計/開発,仕様化/プロファイル化,定式化を通して,ロボットの非専門家の要求に答える機能群のあり方を研究する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究項目1(産技大 成田分)については、試作を完了し、検証ソフトの発注準備を行ったが、発注先のソフトウエア開発会社が多忙のために、2014年度中に納品は困難なことが明らかになった。このため、2014年度の発注を見合わせた。また、採択された論文の掲載料として用いる分については、掲載が2015年3月であったために、年度中の支払いが困難であり、2015年度に支払いを行うこととした。 研究項目3(階層化)(産技大 土屋分)については、2014年にはシステム開発費として研究費を利用する予定であったが、設計及びプロトタイプの作成が遅れてしまったため、ブラシュアップ等、2015年度今年度に利用することにした。研究項目3(実証)(芝浦工大 松日楽分)については、2014年度は小規模の試作のために2015年度に繰り延べた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究項目1の検証ソフトは2015年度はじめに改めて発注する。論文掲載料は2015年度に支払いをする。 研究項目3(階層化)については、今年度の早い段階で開発を発注し、今年度中に完成を予定している。また2016年度には本システムを利用して実験・評価を行っていく。研究項目3(実証)については、2015年度に2014年度分とまとめて実証用ロボット用のワンボックスコンピュータ等を購入する。
|
備考 |
ロボットサービスイニシアチブ主催、ロボット学会共催、NEDO共催の「RSNPを活用したロボットサービスコンテスト 2014」の事務局を務め、ROBOMECでの技術説明会を行い、日本人工知能学会に於いて近未来チャレンジに「CRSP クラウドベースのロボットサービス統合基盤」として1回目のサバイバルを果たすなど、ロボットのソフトウエアプラットフォームの普及に多いに貢献した。
|