操作する機械に対する安全性や安心感は,それが動作する環境で大きく異なる.「車いすロボットと搭乗者を取り巻く2重の構造化環境」を構築することで,「安全・安心を与える情報構造化環境の構成要件」を明らかにしようとした. 最終年度は,前年度までに実施した3つのサブテーマ(1:GISを用いた環境と搭乗者との関係,2:自動運転における安全技術,3:搭乗者の生体情報と安全性)毎の精度検証を基に,「構造化環境およびロボットの安全性」,「人の操作による安全性」と観測される「搭乗者の心的ストレス」との関係を実験的に求め,情報構造化環境が安全・安心に与える影響を明らかにすることとしていた. 最終的に構築した実験環境は,大学建物内および屋外キャンパスの実空間と,これを模擬できるシーン画像投影型の仮想空間の2種類と,共通の実体である車いすロボットと視線計測であった.GISと車いすロボットとを連動させた構造化環境では,複数の自律走行モードでの走行可能範囲をGISの機能により求めることで安全性を評価できた.仮想環境については,実走行との差異が少なくなるよう,HMD等の装着型の機材は用いず,大画面スクリーンでの仮想環境提示を行うこととし,実環境構造化環境との統合を行った.実験では,2つの構造化環境(実環境,仮想環境)で同じように車いすロボットの操作と視線計測を行うことができることを確認した.本課題については,構造化環境構築の要件収集に留まっており,現在,引き続き,生体情報の収集および整理,実空間とこれに対応する仮想空間でのデータ収集を継続している.
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