研究課題/領域番号 |
26330307
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
野本 弘平 山形大学, 理工学研究科, 教授 (60456267)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 概念移転モデル / きっかけ情報 / 価値捜索視行動モデル / 視線計測 / 自己価値セレンディピティ / 共感価値セレンディピティ / 凶器頻度 / グラフ理論 |
研究実績の概要 |
初年度に構築した「発見行動モデル」と対を成す「空間移動モデル」の構築が当該年度の計画であった.しかしこの「発見行動モデル」の研究から,セレンディピティで重要となる概念転移のきっかけ情報を同定できる可能性が見出されたため,さらに,そのきっかけ情報と視行動との関連が深いことが分かったため,計画をやや修正し,初年度のモデルを「発見時概念移転モデル」に発展させることと,2年目のモデルを「価値捜索視行動モデル」に替えて構築することを,当該年度の目標とした. 「発見時概念移転モデル」の構築では,共起頻度解析とグラフ理論に基づき,概念クラスターを抽出すること,およびその概念クラスター間の移転となるきっかけ情報を同定する仕組みをモデル化した.このモデルにより実験データから,抽象的なイメージと目の前の街の風景との架け橋となるきっかけ情報を同定した. 「価値捜索視行動モデル」の構築のために,2つの実験を行った.第一の実験では,36名の被験者に視線計測装置を装着して歩いてもらい,注視率,視対象,視線移動のパタンを抽出した.第二の実験では,35名の被験者に街中で見つけた興味あるものを報告してもらい,自分個人としてはどれくらいの期間に一度巡り合える価値かを表す自己価値セレンディピティと,紹介したらどれくらいの人が同じ価値を認めてくれるかを表す共感価値セレンディピティにより,定量化を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「発見時概念移転モデル」は完成し,実験データに対するモデル適用も有用な結果を導いた.よって,この部分の進捗は順調である. 一方「価値捜索視行動モデル」では2つの実験を行い,視行動,および自己価値セレンディピティと共感価値セレンディピティのデータ解析を行った.そしてこれに基づき,同モデルの構築を進めているが,数学的意味づけと定式化の点がまだ不十分である.このため,この部分は若干の遅れがある. しかし,最終年度に予定していた「見ることと移動することとのインタラクション」について一部先行して進んでおり,さらに,視対象の距離分布をはじめとするデータ解析も先行している. 以上のことを総合して,全体としてはおおむね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度には,2年目までで構築された「発見時概念移転モデル」と「価値捜索視行動モデル」に基づき,「見ることと移動することとのインタラクション」のメカニズムを解析し,価値を見つける能力すなわちセレンディピティの高い人の行動と認知のメカニズムを明らかにする.そしてこのメカニズムを応用して,街の価値,魅力を一般の人に「自分で発見」させるための「さりげない演出法」について提案を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予備実験を繰り返し,2年目の本実験を計画する段階で,本研究における実験の重大な課題が明らかになった.それは,セレンディピティの解明のためには被験者が発見した価値・魅力が実際にどれだけのものかを評価する必要があるが,実験者らのいる米沢周辺の街中には,強力な魅力資源がないため,多くの人が同意する評価基準が決められないということである.この問題を解決するためには,強力な魅力資源が街中に存在する地での実験が不可欠である.この地は遠隔地となるため,多くの経費が必要となる.そこで,部分的なモデルを構築していく2年目までの実験は特定のデータが取得できれば良いので,近隣の地で経費を節約して行い,最終年度に条件を満たす遠隔地で,規模の大きい総合実験を行うこととした.このために,経費を残している.
|
次年度使用額の使用計画 |
遠隔地での実験における最大の問題は,現地における被験者の確保と管理である.実際問題としてこれらの活動は現地の業者に委託しなければならないため,また,業者が確保する被験者のチャージは高額なため,実験予算のうちのかなりの部分をここに割り当てることになる.また,2年目までの実験では,計測機器やカメラ,データ処理の機器などの大半は,既存のものを用いてきたが,最終的な総合試験では,要求性能的にも同時多進行実験のための数量的にも,にこれらを一部補う必要がある.以上の計画を遂行するために,予算は有効に用いられる.
|