研究課題/領域番号 |
26330310
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
石井 雅博 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (10272717)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 能動的運動 |
研究実績の概要 |
二義的に解釈可能な運動刺激を用いて,刺激提示後に知覚される回転方向,および,その方向の回転持続時間を計測する.刺激を単純観察した際のこれらの値をベースラインとし,観察条件を変えるとこれらの特性がどのように変わるかを調べる.具体的には,体性感覚情報を同時に与えたときの変調率と刺激を能動的に操作したときの変調率とを比較するなどして,刺激への能動的関与の効果を明らかにする. 観察者に提示する視覚刺激として運動奥行き効果刺激を用いる.この刺激を観察者に提示し,刺激提示直後に知覚される回転方向の割合を調べる.また,その方向の回転持続時間を計測する.この2つの値をベースラインとし,観察条件を変えるとこれらの値がどのように変わるかを調べる.実験では,透明な球の表面にランダムドット光点が分布するような刺激を用いる.パーソナルコンピュータベースの視覚刺激生成装置を用いて刺激を生成し,ディスプレイに表示するとともに,観察者応答の取得や実験の制御を行う.実験は暗室内で行い,ディスプレイ観察距離は33cm,刺激の回転速度は15rpm,刺激サイズは視角10度,単眼観察とする.刺激は,暗黒中の白色ランダムドットとして表現する.刺激操作用の入力にはクランクハンドルを用いる.ハンドルクランクの軸をディスプレイの下方に置き,刺激の回転軸とクランクの軸が同一直線上に乗るようにする.また,クランク回転径と視覚刺激の径を同一とする.これは,観察者が刺激を操作している感覚を高めるための配慮である.観察者は裸眼あるいは矯正で正常な視力を持つ10名とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動奥行き効果を用いて同様の問題を調べている.運動奥行き効果とは,二次元平面に投影された影からは元の三次元立体の形は分からないが,三次元立体を回転させ二次元平面に投影された影が動き始めると三次元立体の形が知覚される現象である.この効果による奥行き感は強力であるが,凹凸方向の知覚に関して曖昧性が残る.つまり,立体の回転方向が一意に決定できず,ネッカーキューブのように二義的解釈が可能なのである.運動奥行き刺激が提示されたとき,右回転あるいは左回転のどちらに見えるかは観察者には決められないし,右回転だと思って刺激を見続けていると,ある時点で急に回転方向が左に切り替わったりする.申請者は,観察者が手を用いて運動奥行き効果刺激の回転を制御した場合,凹凸曖昧性が解決されるか調べた.観察者による刺激の回転制御の入力にはトラックボールを用いた.実験の結果,刺激への関与が凹凸曖昧性解決に寄与することが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
以下の2つの観察条件で回転方向・持続時間を調べて,比較する. <観察条件1> 観察者に手を用いて運動奥行き効果刺激の回転を制御させ,それに同期する視覚刺激を提示し,知覚される回転方向や持続時間を調べる.観察者にはハンドルを15rpmで回転させるよう指示する.回転速度を一定に維持するためにメトロノーム音を観察者に与える. <観察条件2> クランクハンドルをモーターで駆動し,視覚情報と同時に体性感覚情報を観察者に与える.このとき観察者は能動的に手を動かすのではなく,バンドでハンドルに手を縛り付けて受動的に動かしてもらう.回転速度は15rpmとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請前から用いている実験装置に,機能追加する形で研究を進めている.初年度である,昨年度は,追加する機能の詳細を決定し,従来装置への組み込みを行ってきた.既存のコンピューターを使って動作確認を行った.試用後の評価に基づいて,さらに装置を改良する予定であったが,従来の装置で実験を行う必要が生じたため,この状態で研究を進めた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に乗っ取って,実験装置の改良を行い,予定していた実験を行う.
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