研究課題/領域番号 |
26330315
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
望月 要 帝京大学, 文学部, 教授 (80280543)
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研究分担者 |
大西 仁 放送大学, 教養学部, 准教授 (40280549)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 対人コミュニケーション / 音声知覚 / 言語知覚 / 空気流 / 触知覚 / 実験心理学 / 感性工学 |
研究実績の概要 |
音声コミュニケーションにおいて,話し手の発声により生じる微弱な空気流が,触知覚を通して聞き手の音声知覚に影響を与えていることが2009年に発見された。これは,空気流触知覚が,視聴覚情報を補い,あるいは,感情や情動の伝達に貢献している可能性を示唆するものである。本研究は,(1) 音声コミュニケーションにおける,空気流触知覚の役割について,先ず,視覚・聴覚情報の補完機能に注目して,視聴覚情報が劣化した際に,空気流知覚がどこまで,音声言語聞き取りに貢献するのかを実験心理学的手法により明らかにし,(2) 次に,空気流触知覚が,コミュニケーションにおいて,特に感情の伝達や共有 に関して果たしている役割わ明らかにすることを目指している。 今年度は,日本語の母音と子音の発声と,発声時の表情変化を記録した実験用動画像を用い,マガーク効果など,発声時の唇の動きなどの視覚情報と聴覚情報の相互作用に関する先行研究の追試確認と,視覚情報と聴覚情報の微細な時間差の影響の確認を試みた。その結果の検討から,動画像刺激の音質と時間遅延の設定に問題がある可能性が明らかになり,動画像刺激の改善と,音声呈示装置の変更と改善を行なった。 同時にこの計画の遅れを補正する為に,来年度に計画していた微小空気流の呈示を制御するための実験装置の試作に着手し,制御システムの選定を終え,呈示系の概略の設計を完了させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ申請時の計画通りに進行している。心理学実験の動画像とその呈示 方法に改善の必要が生じ,それへの対応によって心理学実験の進行が遅れたが, その分,来年度に計画していた実験制御システムの開発に着手し順調に進展し ている。
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今後の研究の推進方策 |
従来,マガーク効果の実験では,音声を単発的に呈示していたが,本研究では,単発呈示に加えて,連続反復,他の子音や母音と組み合わせて無意味な単語とした場合など,注目する音素だけでなく,その前後の音素との組合せとマガーク効果の関係についても検証したい。併せて回答に要する時間を測定して,これを,聞き取りの確信度あるいは難易度の間接的指標として評価し,先行研究との比較を試みる。この心理学的実験の計画と準備は帝京大学が担当し,実験は放送大学と分担して実施する。 今までの試作と検討を踏まえて空気流呈示装置を製作し,その性能確認を兼ねて,心理物理学的測定実験を実施する。空気流触知覚に関する研究は殆ど行なわれていないので,この過程で得られる絶対閾,弁別閾などの心理物理学的定数は,それ単独でも貴重な心理物理学の基本データとなりうる。 Gick & Derrick (2009) の実験を,日本語話者と日本語を用いて追試する。単発音声だけでなく,連続反復や他音声との組合せを用いることで,音声聞き取りに及ぼす空気流触知覚の影響に関する知見の拡大を目指すと同時に,次に続く,視聴覚との相互作用研究に必要な基本的知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入に必要な費用が予想を僅かに下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年以降、消耗品あるいは研究協力者謝金などに活用する予定である。
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