研究課題/領域番号 |
26330317
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
武田 昌一 東京都市大学, 工学部, 客員教授 (10245293)
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研究分担者 |
桐生 昭吾 東京都市大学, 工学部, 教授 (00356908)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感性BMI / 近赤外分光法イメージング装置 / 感情音声合成 / 音楽 / 小倉百人一首 / 脳の情報処理 |
研究実績の概要 |
1.音声合成分野:感情音声認知の研究のうち,fNIRS(脳血流の特性を計測する装置)による感情音声発声・聴取時の脳の反応測定研究では,「怒り」,「喜び」,「悲しみ」の3感情をイメージし,その後音声を発声したときの脳血流(酸素化ヘモグロビン量)を計測した。その結果,「感情イメージ時」,「発声時」に3感情のうち怒りが最も酸素化ヘモグロビン量が増大して脳が興奮している状況を示す等の結果が得られた。 2.音楽・視覚認知分野:音楽聴取時と音楽イメージ形成時の脳活動についての研究では,過去の記憶や情景と密接に関係する音楽と,全く知らない音楽を聴取・イメージ形成時のfNIRSデータあるいは脳波データを収集・解析した。更にこの結果に基づき,音楽を聴き画像を探索・選定するモデルを構築した。関連発表1件。 3.究極の精神的・肉体的活動時の脳の反応 -小倉百人一首競技かるたを例として-:(1)かるた競技時の脳の情報処理のfNIRSデータに基づく解析では,A級(最上級)選手と初心者の脳の反応を調べる実験を行ったところ,初心者よりA級選手の方が札に対する反応が早いことを示す結果が得られた。関連発表1件。(2)和歌の読みの認識と札を取るまでの時間の精密測定の研究では,読みの認識時間データの統計的特徴の解析等を行った。その結果,認識時間は選手の級によらないこと,札の種類によって認識しやすい札とし難い札があること等がわかった。関連発表3件。 4.新型感性コミュニケーション方法の開発:脳・神経系の拡張情報理論に基づく障害者対象代替コミュニケーション方法の基礎研究では,新情報理論に関するモデル,原理,定理等を導いた。関連発表5件(内2件査読中)。 5.そのほかの研究テーマについては研究継続中あるいは論文執筆中。以上得られた結果は,脳における感情や感性生成メカニズムを解明する一プロセスとして重要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれのテーマではそれなりの成果が得られている。進捗状況はテーマにより異なる。ただし,初年度であるということで,まだ全体としてのまとまりが十分とは言えない。全体として「おおむね順調に進展している。」と評価した理由は,下記の点で成果が出ていると考えたからである。 1.音声合成分野:感情音声認知の研究のうち,fNIRS(脳血流の特性を計測する装置)による感情音声発声・聴取時の脳の反応測定研究で,一応の成果が出ている。 2.音楽・視覚認知分野:音楽聴取時と音楽イメージ形成時の脳活動についての研究では, fNIRSと脳波測定・解析結果に基づき音楽を聴き画像を探索・選定するモデルを構築できたことより,成果が出ていると考える。 3.究極の精神的・肉体的活動時の脳の反応 -小倉百人一首競技かるたを例として-:(1)かるた競技時の脳の情報処理のfNIRSデータに基づく解析と,(2)和歌の読みの認識の研究で成果が出ている。 4.新型感性コミュニケーション方法の開発:脳・神経系の拡張情報理論に基づく障害者対象代替コミュニケーション方法の基礎研究では,従来の研究経過と同様に,一つ一つ対象と成る事象のモデル構成を積み上げる方法で本研究は進められている。平成26年度中にもモデル,原理,定理等を導出して来たので,「おおむね順調に進展している。」と評価出来る。
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今後の研究の推進方策 |
1.今後は,研究を組織的に連携して行っていくために,中間報告会や研究連絡会などを開催して研究者同士の交流・連携を深めていきたい。 2.感性 BMI を構成するために購入したウェアラブル光トポグラフィー装置を使った実験中心に研究を遂行していく。 3.新型感性コミュニケーション方法の開発:脳・神経系の拡張情報理論に基づく障害者対象代替コミュニケーション方法の基礎研究は,概ね順調に進んでいるので,従来の研究推進方法を続け,少し時間は掛るが,一定の成果をまとめる所が,次のマイルストーンとなる。 研究計画の変更 (1)初年度に予定していた論文化が遅れているので,次年度に論文化するとともに当該年度の研究を遂行するよう計画変更し,鋭意努力していきたい。(2)新型感性コミュニケーション方法の開発:脳・神経系の拡張情報理論に基づく障害者対象代替コミュニケーション方法の基礎研究の一環として更に,個体の反応を最も根源的に,簡便に確認することができる粘菌とのコミュニケーションも研究対象に加える。非言語コミュニケーションには粘菌の一種P.Polycephalumを用いているが,内部には,脳・神経系と似た構造の管状葉脈があり,これが情報の伝達に用いられていると考えられる。今後内部での情報の伝達,発信を測定し,非言語コミュニケーション方法の解明を進める。さらに原始的な脳・神経系の仕組みから非言語コミュニケーション方法を検討し,障害者対象代替コミュニケーション方法の模索を進める。
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