研究課題/領域番号 |
26330320
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
米原 牧子 近畿大学, 次世代基盤技術研究所, 研究員 (90549552)
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研究分担者 |
杉林 俊雄 拓殖大学, 工学部, 教授 (80171172)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 質感 / 設計指針 / ISO規格 / 表面性状 / 光沢度 / 粗さ感 / 触感 / 視感 |
研究実績の概要 |
工業製品をデザインする際,製品外観の高付加価値化のために重要とされる「質感」については,デザイナーと技術者(生産現場)間において使用される共通の設計指針はなく,口頭による感覚的な表現が用いられることが多い.そのため,両者の意思疎通が難しいのが現状である.そこで本研究は,質感の設計指針の確立に向け,質感を構成する要素のうち「粗さ」に着目し,人の感覚を考慮した粗さの設計指針の提案を行うことを目的とする.そのために,まずは加工面等の表面における凹凸形状の特徴について,可能な限りあいまい性を排除した定量評価をする必要がある.そこで平成26年度は,凹凸形状を特徴づけるために有効な物理指標となり得る表面性状パラメータについて検討した. 供試材はシボパターンの異なる黒の樹脂サンプル12種類とし,パターンごとに3段階に深さが異なるものを準備した.表面色は明度及び彩度の平均値がほぼ同じ値を示した.表面性状は,ISO25178-2に準じた3D表面性状パラメータを用いて評価した.得られた表面性状パラメータは全部で35種類であり,各パラメータについて光沢度との関係を調べた結果,シボパターンが変化しても光沢度と高い相関を示す表面性状パラメータがあることがわかった.さらに,光沢度の値は1種類の表面性状パラメータによって一義的に決定するものではなく,2~3種類のパラメータの組み合わせが必要なことを示した.また,粗さの感覚量を定量化するために用いるサンプルを選定するため,シボパターンの見た目の特徴について主観評価を行った結果,シボ深さを限定すると,光沢度の値は見た目で特徴づけられる粒の大きさの評価との相関が高いことが示唆された.そのうち代表的なシボパターン2種類を選定し,粗さの触感と表面性状パラメータとの相関を調査した結果,パターンの違いによって粗さの感覚量が変化することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は凹凸形状を特徴づけるため,物理指標の相関関係について検討することと,次年度に行う主観評価のためのサンプル選定の実施を計画し,ほぼ完了している.さらに,次年度実施予定であった粗さの触感評価に着手していることと,凹凸形状の特徴づけに関する考察を深めるため,新たに触感評価の際の圧力測定を計画し,実験準備を既に進めていることよりも,達成度は当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,凹凸形状を特徴づけるために有効な物理指標となり得る表面性状パラメータについて検討した.その結果,パターンの違いによって粗さの物理量及び感覚量が変化すること明示した.これらの結果を踏まえ,平成27年度は,凹凸形状を特徴づける要因について検討するため,まずは,触感評価に関連し,人が指で表面に触れる際にかかる3方向の圧力測定を行い,その分力比から表面性状パラメータやパターンの違いについて考察する.また,粗さの視感評価を実施し,触感及び視感における粗さ感の感覚尺度構成を行う.その際,当初予定していたマグニチュード推定法は使用せず,カテゴリー判断法のみで主観評価を実施することとする.これは,マグニチュード推定法で得られる結果と,平成28年度に実施予定であったカテゴリー判断法により得られる結果に相関性があることと,設計指標とするための境界物理量を求めるためにはカテゴリー判断法が有効であると判断したためである.以上を要約すると次のとおりとなる. 平成27年度は,1.凹凸形状を特徴づけるため,粗さの触感評価による三分力値が粗さ感に与える影響について検討し,2.粗さ感の視感評価における実験環境の構築及び評価実験を実施する. 平成28年度は,平成26年度及び27年度に得られた結果を踏まえ,視感及び触感による粗さ感の主観評価と,3D表面性状パラメータとの相関性に関する総合的な検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入を予定していた物品のうち,例えば標準光源装置については別途購入を予定していた装置設置用の台を装置一式として購入することが出来たり,予定していた国内学会発表の場所を近隣に変更するなどし,想定していた使用額より低い額に抑えることが出来たため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,主として国内学会発表及び研究分担者と研究打ち合わせのための旅費や論文の投稿料として使用する計画である.
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