研究課題/領域番号 |
26330323
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
横井 功 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (50592747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 素材知覚 / 実物体 / サル |
研究実績の概要 |
素材知覚の神経メカニズムを明らかにする上でサルは有用なモデル動物である。サルがどのように素材を知覚しているかの手掛かりを得るために、実物素材刺激を用いてサルの行動反応を記録し解析を行った。9種類の素材カテゴリー(金属、ガラス、陶器、石材、木目、樹皮、皮革、布、毛)からなる実物素材刺激セット(合計36個:9カテゴリー×各4サンプル)を、サルの前面に設置した実物素材提示装置を用いて呈示した。実物素材刺激は円柱の形状を持ち、サルはこれを把持することで報酬を得る。ストレインゲージを用いてサルが実物を把持して手前に引っ張る力の強さを計測した。課題の成功率は素材カテゴリーに依存し、サルが簡単に触る素材(金属、ガラス、木目)と触れることを避ける素材(毛)が存在した。実物素材刺激を引く力は高い成功率を示す素材カテゴリーでより強い傾向を示し、課題成功率と引く力との間には相関があることが明らかになった。実験を行った複数のサルにおいて同様の傾向が見られ、個体間での相関がみられた。これらの結果は素材に対するサルの行動には過去に素材に触れた経験と、生物学的な重要性が反映されていることを示唆する。また、実物素材刺激セットを写真撮影した画像素材刺激を平面ディスプレイ上に呈示し、サルに素材画像をタッチさせる課題を行わせた場合には、素材カテゴリー間での成功率の差はほとんど見られなかったことから、実物素材刺激が持つ三次元構造が強い情動反応を引き起こしたと考えられる。これらの結果をまとめた論文を現在作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に1頭のサルが突然死したため生理実験の進捗がやや遅れているが、これまでに行った実験よって、サルの下側頭皮質ニューロンの素材刺激に対する反応特性、実物素材を用いたサルの行動実験において素材カテゴリーに依存した行動反応が明らかになってきている。また、fMRIを用いた実験によってサルの下側頭皮質の素材の表現様式は視触覚経験の前後で変化することがよって明らかになっている(生理学研究所・郷田直一らと共同で実施)。これらは素材知覚の神経メカニズムの解明において新規な知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
多感覚的経験による影響をニューロンレベルで明らかにするために、注視課題遂行中のサルの下側頭皮質から単一細胞外電位記録法を用いて素材画像に対する神経応答を記録し、神経表現と行動反応との関係性について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に1頭のサルが突然死してしまったたため実験がやや遅れている。そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生理実験を行うための金属電極、試薬などの消耗品を購入する。論文発表の費用や研究成果を学会等で発表するための出張旅費として使用する。
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