研究課題/領域番号 |
26330326
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
雨宮 隆 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (60344149)
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研究分担者 |
伊藤 公紀 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (40114376)
山口 智彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 首席研究員 (70358232)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞 / 解糖系 / 振動反応 / 同期現象 / 生命機能 |
研究実績の概要 |
本研究では,生命活動において振動や同期現象が広く見られるのはなぜかを明らかにすることを目的としている。本研究では,全ての生物が行う解糖反応に着目し,特に酵母細胞を研究対象として,解糖系の振動・同期現象の生命機能について,本年度は,酵母細胞が解糖反応を振動させる生命機能について研究した。 振動状態と定常状態の生命機能を比較するためには,同一の条件下における2つの状態の生命機能を比較する必要がある。双安定状態が見出されれば,同一条件下における定常的解糖反応と振動的解糖反応のエネルギー獲得効率を比較することができる。そこで,解糖系振動反応の7変数数理モデルの分岐解析を行い双安定性を見出した。この双安定状態において,ATPおよびピルビン酸の単位時間(1周期)当たりの生成量を計算すると,振動状態の方が定常状態よりもエネルギー獲得効率(単位時間当たりの生成量)が6~8%程度大きいことを明らかにした。すなわち,単一細胞では,定常的な解糖反応よりも振動的な解糖反応の方が,時間効率が高いことを明らかにした。 また,細胞集団の同期的解糖反応の生命機能を研究するために,まず,細胞集団の振動挙動を単一細胞レベルで観測可能な実験システム(倒立顕微鏡システム)を立ち上げ,単一細胞の解糖系振動を観測できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一細胞レベルの解糖系振動反応の生命機能については,数理モデルを用いて解析を行い,振動的解糖反応が定常的解糖反応よりもエネルギーや物質生産の時間効率が高いことを示すことができた。さらに,細胞集団の同期的振動状態を単一細胞レベルで観測可能な実験系を立ち上げ,単一細胞の解糖系振動反応を測定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞集団における同期的解糖系振動反応を実験的に観測することを第一に進める。すなわち,同期現象の細胞密度依存性について,前年度までに立ち上げた実験系を用いて検討を行う。特に,同一の細胞密度であっても,空間的な分散状態や集合状態が,個々の細胞の振動反応や細胞集団の同期現象に影響を及ぼすことが考えられるため,そのような状態を制御できるシステムの構成も併せて進める。実験データが得られた後に,数理モデルを用いて細胞同士のカップリングによって,個々の細胞の振動状態やエネルギー獲得効率がどのように変化するかについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の旅費として使用を計画していたが,都合により参加できなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度7月に開催予定の海外で開催の研究会の旅費として使用予定。
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