研究課題/領域番号 |
26330332
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
池田 有理 明治大学, 理工学部, 准教授 (30371082)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオインフォマティクス / タンパク質 / 翻訳後修飾 / 糖鎖 / 二次構造 / 立体構造 / 細胞分子生物学実験 |
研究実績の概要 |
1) 二次構造情報を用いた糖鎖修飾予測法の改良: PDBデータ中のO型糖鎖を含むタンパク質を対象とし、糖の種類ごとに、糖鎖修飾位置周辺の二次構造のバリエーションを調査した。二次構造の出現傾向は、糖種ごとに異なった特徴を持っていた。以上から、各糖転移酵素の認識における異なる二次構造の指向性を示すことができた。O型糖鎖修飾は全般にストランド構造とコイル構造の境目に受けやすく、特にFucはストランド末端に修飾されていた。この内容について、1件の論文発表および国内外学会での発表を行った。 2) 糖鎖周辺の空間的アミノ酸出現傾向の調査: フコース (Fuc) 修飾とアセチルグルコサミン (GlcNAc) 修飾を受けた糖鎖周辺の空間的アミノ酸出現傾向を調査した。芳香族アミノ酸の出現傾向を中心とする特徴から、FucおよびGlcNAc修飾の糖転移酵素と相互作用する可能性のあるアミノ酸が特定できた。一方、糖転移酵素や糖分解酵素でも、糖鎖認識部位の周辺に芳香族アミノ酸が存在することがわかった。これらの芳香族性残基が糖種の選択性に寄与している可能性が示された。この内容について、国内外学会での発表を行った。論文投稿中である。 3) 細胞分子生物学実験による検証に向けた準備 O型糖鎖修飾を受けることがわかっている8残基のペプチドをコードする遺伝子を、GFPの遺伝子に結合し、GFP融合タンパク質を発現させた。また、真核細胞内で糖鎖修飾を受けるために、小胞体輸送のためのシグナルペプチドもN末端側に導入した。HeLa細胞内での発現、精製、ウェスタンブロッティングによる糖鎖修飾の確認まで順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度には、糖鎖修飾を受けている位置周辺の二次構造の調査と糖種ごとの特徴抽出が計画されていた。この内容については順調に進めることができ、糖種ごとの特徴抽出に至った。糖鎖修飾予測のパラメータに加えることが可能である。
上記の内容に加え、平成27年度中には、立体構造情報をもとに空間的アミノ酸出現傾向を糖種ごとに明らかにすることができた。特に、芳香族性のアミノ酸が、糖種選択性に関与していることを示すことができた。当初、28年度に計画されていた内容である。
さらに、一次配列、二次構造、空間的アミノ酸出現傾向の特徴を実験的に確認するための検証実験の下準備を終えることができた。この実験は、当初の計画では、本研究期間終了後の展開に含まれていた内容であり、平成27年度中に実施することができたことは大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度(最終年度) 1) 糖鎖修飾予測法の改良:糖種ごとの二次構造の指向性、空間的アミノ酸出現傾向をパラメータに加え、糖鎖修飾予測法・糖種判別法を改良する。また、予測法の評価試験を、差分データを含めた客観的な方法で行う。 2) 網羅的な糖鎖修飾予測:ゲノムORFを用いて、網羅的に糖鎖修飾の有無・糖種を予測する。特に、優先的に予測・判別を行う生物種として、線虫を候補に考えている。線虫はヒトより単純な生体構造をとっているが、ヒトと共通する糖鎖修飾関連遺伝子を150程度も有することが知られている。組織特異性の解析を進める上でよいモデルとなり得る。 3) データベース構築:アミノ酸配列と立体構造、糖鎖修飾位置と糖種、機能、細胞内局在化経路、選択的スプライシング、組織特異性などを含んだ糖タンパク質のデータべースを構築する。 4) 実験検証:平成27年度に作製したGFP融合糖ペプチドを用いて、糖種の分析を行い、これまでに抽出した配列・構造・物理化学的性質の特徴や、糖鎖修飾予測・糖種判別の結果と比較する。また、ペプチド配列のミューテーションにより、糖種と配列・構造・物理化学的性質との相関を明らかにする。
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