今年度は、タンパク質糖鎖修飾予測法の改良を行った。また、当初は網羅的な糖鎖修飾予測とデータベース構築の遂行が計画されていたが、研究結果を鑑みて計画を一部変更し、細胞内局在経路と修飾を受ける糖種との相関を明らかにするための人工糖タンパク質を用いた実験検証を行った。
1) 糖鎖修飾予測法の改良:糖鎖修飾位置周辺のアミノ酸配列から得られた糖種特異的PSSM、および、シグナルペプチド・膜貫通領域の有無から分類される細胞内局在経路を要素とし、糖鎖修飾における糖種判別の改良を行った。配列情報だけでは判別が難しい糖種の組み合わせを明らかにする目的で、各糖種総当たりの組合せ判別を行ったところ、GalNAcとGlcNAcの組合せでは判別精度が極めて低いことが判明した。しかし、細胞内局在経路を要素に加えることにより、GlcNAc修飾残基はGalNAc修飾残基から完全に区別することが可能であった。そのため、タンパク質をまず細胞内局在経路によってGlcNAcとFuc・Xyl・GalNAcの2グループに分類した後に、Fuc・Xyl・GalNAc内において糖種特異的PSSMを用いて判別スコアを算出する方法で、2段階の判別を実施することにより、糖鎖修飾の糖種判別を高精度で実現した。なお、糖種ごとの二次構造の指向性、空間的アミノ酸出現傾向をパラメータに加えても、予測精度が向上しないことがわかった。
2) 実験検証:人工的に作製したGFP融合糖ペプチド遺伝子を用いて、複数の細胞内局在性を持つ遺伝子に改変した。ウェスタンブロッティングにより、ヒト培養細胞内における人工糖タンパク質の発現と糖の修飾を確認した。今後、実験展開を行うための基盤が構築できた。
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