研究実績の概要 |
生命科学分野には多様なビッグデータが集積しており、そこからの能率的な知識発見には、高機能計算機(HPC)を活用した、人工知能(AI)による研究開発が適している。我々のグループが開発してきた、オリゴヌクレオチド組成に着目したBLSOM(一括学習型自己組織化マップ)はゲノム解析に適しており、教師なし機械学習であることから、想定外の新知識発見を可能にする。 前年度までの研究で、インフルエンザやエボラウイルスのような人類に多大な影響を与えている感染症RNAウイルスゲノムを対象にしたAIを用いた解析で、時系列的に方向性や再現性のあるオリゴヌクレオチド組成の変化を見出した。最終年度ではこれらの基礎的な成果を応用して、進化速度の極めて高いRNAウイルスについて、効果が持続すると期待できる核酸医薬(オリゴヌクレオチド医薬)をデザインする手法を開発し、具体的なオリゴヌクレオチド配列の例を含めて論文発表を行った:Gene Therapy volume 24, 668-673 (2017)。 時系列的に方向性や再現性のある変化を生む要因は、ウイルスの増殖に多様な宿主因子が関与することにあるが、インフルエンザウイルスについてのAIを活用した解析により、宿主動物のmiRNAの関与する例を推定できた。これについては、学会での口頭発表を行った段階で、論文発表を準備している。また、高等動物ゲノムのタンパク質非コード領域のAIを用いた機能推定の研究成果は、学会での口頭発表を行った段階で、論文発表を準備している。
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