研究実績の概要 |
2つのタンパク質のアミノ酸配列の相同性が高ければ、その3D構造は類似しているとされるが、最近この経験則から大きく逸脱するタンパク質がデザインし合成されている。これらはStreptococcus protein Gを基にしている。このタンパク質はヒト血清アルブミン(HAS)と結合するGAドメインとIgGのFc領域に結合するGBドメインから成る。この2つのドメインは配列相同性も低く当然立体構造は異なる。これらの構造は3α-へリックス束 と 4β-シート + α-へリックスである。本研究では、アミノ酸配列相同性が88%, 95%, 98%にのぼるが3D構造が互いに異なるGAドメイン関連タンパク質とGBドメイン関連タンパク質を取り上げる。しかしながら標準的なアミノ酸解析法では本問題の解決は困難である。本研究では、アミノ酸間平均距離統計に基づくコンタクトマップ(Average Distance Map, ADM)による方法、及びこの統計を利用して導き出した残基間ポテンシャルを用いた変性状態シミュレーションにおける残基間コンタクト頻度(F値)の計算からこの問題に取り組んだ。さらに疎水残基の進化的保存性についても解析を行った。さらにCaGoモデルによっても検証を行った。まず方法論の確立から試みた。本研究の仮説は、ADMによる予測領域が、タンパク質初期フォールディング部位であり、F値ピーク近傍の保存疎水残基がフォールディングに深く関わる残基であるというものである。この仮説はリゾチームやヘモグロビンのフォールディングについて検証された。その結果2つの構造を決める要因は疎水凝縮の強さと中央へリックスの安定性との拮抗であることが示唆された。
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