本研究は、大規模な企業間の取引ネットワークの分析に基づき、ネットワークにおける企業間の新たな提携・連携先の発見支援、および頑健で持続可能なサプライチェーンの構築支援を目的とする。そのために、機械学習手法である深層学習を用いて、企業間の取引に関わる大規模な異種のビッグデータから取引構造の潜在的な特徴量の抽出を行い、取引構造を汎用的にモデル化する手法の研究を行った。その上で実際に取引先の推薦サービスを提供するシステム構築を行った。
平成26年度は主に、企業情報、取引情報、ウェブ情報等の大規模な異種のビックデータから取引構造の潜在的な特徴量を抽出する技術の実現のために、関連するデータを網羅的に収集した上で「深層学習を用いて取引構造に関する潜在的特徴量を抽出する手法の設計と実装」について研究を進めた。平成27年度以降は「潜在的特徴量を用いた取引関係予測の学習器の設計と実装」について研究を進めた上で、企業間の取引ネットワーク全体のレジリアンスを考慮した、企業間の新たな提携・連携等の取引先を推薦する技術の実現のために、「取引ネットワーク全体の回復性や持続可能性を定量化し、それらを最適化する取引先推薦手法の設計と実装」について研究を進めた。最終的には研究開発した手法を応用した取引先推薦システムを構築し、実証実験により手法およびシステムの評価・改善を行った。
その結果、企業の取引に関わる複数、異種の大規模な情報源から収集したデータから、企業間の取引構造のモデル化に重要な特徴量を明らかにした。また、先の震災時のような状況下においても回復性があり持続可能な企業間の取引ネットワークを構築するために、ネットワーク全体の最適性を考慮しながら、企業間の個々の取引先を推薦する手法を明らかした。
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