本研究の目的は、ネットワーク型データの新しい可視化手法を確立することであって、特に、多数の属性が付与されているグラフにおいて、属性毎にどのような構造上の違いがあるかどうかを人間が容易に認知可能にするための情報可視化技術を確立することである。 2015年度より時系列に変化する動的グラフをアニメーションとして可視化するツールCypherVis3Dを実装した。2016年度には、それを活用したパナマ文書やGitHubのコミット履歴を対象とした可視化に取り組んだ。しかし、時間推移に伴い、単純にノードとエッジが追加される様子をアニメーションとして表現するだけでは、いつ誰がどのファイルを頻繁に更新したかを把握することは難しい。そこで2017年度では、3D空間のz軸を時間軸として表す新しいグラフ可視化ツールgitVis3Dを開発した。これにより、x-y平面はその時のノード間の関係を表すスナップショットとみなすことが可能となり、当時どのオブジェクトが存在し、それらを誰が作成または変更したのかを直観的に把握することが可能になった。また、2016年度に開発したGitHubのコミット履歴をNeo4jにインポートするためのツールは、バッチで動作するものであったが、2017年度はGitHub APIを使ってリアルタイムにGitHubからコミット履歴をNeo4jにインポートする機能を開発した。これらにより、GitHubリポジトリにある任意のプロジェクトの可視化が可能となった。 WebGLの普及により、Webブラウザ上で3Dグラフィックが高速にレンダリング可能となった。しかし、3D空間の特徴を活かした実用的なグラフ可視化ツールは、まだほとんど存在していない。本研究により、3D空間における時間軸表現の有用性及びthree.js/HTML5上で十分な処理性能が達成できることを確認することができた。
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