研究課題/領域番号 |
26330355
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
古川 宏 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90311597)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歩行者ナビゲーション / 高度道路交通システム / 高齢者 / 減災 / 不安 / 避難誘導 / GIS / 移動体通信 |
研究実績の概要 |
報告者は、利用者の不安や迷いを軽減する歩行者ナビサービスの実現をめざし、ランドマークの“見つけやすさ”に基づいた経路探索手法を提案している。本研究の目的は、全年齢層の支援のために高齢ユーザの特性に適したモデルを追加すること、避難時の誘導支援のために必要な機能や支援方策を策定することである。本年度は、実地実験に用いる歩行者ナビ・プロトタイプシステムの構築(前年度より継続)と、高齢者の快適さを考慮した経路評価手法の構築を実施した。 1.実地実験に用いる歩行者ナビ・プロトタイプシステムの構築:提案手法に基づく歩行者ナビシステムの有効性評価に向け、プロトタイプシステムを構築した。前年度に構築した基本機構に対し、全ノードにおける位置特定タスクの困難さを評価する認知的負荷評価処理システムの構築、ユーザインタフェースとなる携帯端末画面の構築を行った。 2.高齢者の快適さを考慮した経路評価手法の構築:高齢者のQOL向上を新たな視点とし、モビリティ環境の快適さを考慮した経路探索を実現するため、経路に対する高齢者の心理的コストおよび身体的コストも評価する新たなモデルを構築する。心理的コストで考慮される要因には暗い道、人ごみ、信号、横断歩道、公園など、身体的コストには坂道、階段などがある。本年度は、高齢被験者に対するアンケート形式の調査を通して、経路の快適さに寄与する要因の洗い出し、さらに各要因の心理的あるいは身的負荷の定量化を実施した。本データに基づき、ある負担要因を回避することに対し、あるいは、ある好む地点を経由することに対し、高齢ユーザが許容する遠回り時間をコストとして定義することで、高齢ユーザの身体的負担や嗜好特性を考慮したモデルを構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.本年度実施予定であった「B. 実地実験に用いる歩行者ナビ・プロトタイプシステムの構築」について: 予定通り完了した。昨年度実施の“歩行者ナビ用サーバ”の構築に加え、「GISシステムに基づく認知的負荷評価処理システム」および「ユーザインタフェースとなる携帯端末」を構築した。 2.本年度実施予定であった「C. 高齢者を含む多様な被験者の実証的実験による経路探索機構の妥当性・有効性の評価」について:主として平成28年度に実施することとした。変更の理由を以下に示す。 (1)平成28年度に実施予定である「D. 緊急的避難を想定した実証的実験による経路探索機構の評価と機能設計」に関し、平成26年度より“屋内避難支援に必要な情報と提供方法に関する検討”を実施するなど、繰り上げて着手している。これより、平成28年度の計画に余裕が生じた。 (2)高齢者を対象とした経路探索機構について、当初の計画では、加齢による認知的機能の変化のみに対応したモデルの構築を目指していた。(1)に示したように全体計画に余裕が生じたことから、高齢者のQOL向上をも狙いとし、「高齢者の快適さを考慮した経路評価手法の構築」(A. iii)と位置付ける)を新たに実施することとした。 当初以上の内容を新たな目的と設定しており、研究遂行は全体として計画に沿ったものとなっていることから、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1.「C. 高齢者を含む多様な被験者の実証的実験による経路探索機構の妥当性・有効性の評価」(H28前期):高齢および他年齢層の被験者による提案サービスの実証実験を実施し、有効性の実証評価を実施する。被験者として、高齢者と共に他年齢層の被験者を採用することで、多様な利用者を対象にした評価とする。また、短距離・長距離、都市部・非都市部、住宅地・商店街などの地理的に多様な範囲を条件に組み込む。 2.「D. 緊急的避難を想定した実証的実験による経路探索機構の評価と機能設計」(H28前期):避難誘導における提案サービスの有効性評価と必要機能の検討を目的として、多様な被験者のより、プロトタイプシステムを用いた災害時模擬実験を実施する。災害時における避難誘導を想定して、ナビシステムを用いて迅速に経路を歩行する模擬実験を実施する。通常歩行とは異なる障害や条件、システムによる誘導の有用性と課題、必要とされる機能の検討を行う。 3.「E. 実用化システムに必要となる基本仕様の策定」(H28後期):利用者の不安や迷いを軽減するナビ支援サービスを実現に向けて、歩行者ナビシステムの構築過程で生じた技術的課題、被験者による利用についての観測結果、さらに現在の最新機材の能力・制約を考慮し、要求される技術的要件や解決すべき技術課題の確認し、基本となる仕様の策定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の計画の一部を前倒しして実施したことから、平成27年度に新たな小テーマを追加して実施することとした。一方、平成27年度に実施する予定であった「C. 高齢者を含む多様な被験者の実証的実験による経路探索機構の妥当性・有効性の評価」を平成28年度に実施することとした。よって、この実施に要する被験者謝金の予算を本年度は用いず、次年度の使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施する「C. 高齢者を含む多様な被験者の実証的実験による経路探索機構の妥当性・有効性の評価」において、提案する手法の実証的評価と改良を目的として、構築した歩行者ナビ模擬システムによる被験者実験を実施することを計画している。このとき、実用化に向け多様なユーザを想定することが必要なため、高齢者および青年の多数の被験者に対する謝金の支払いを予定している。
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